人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(12)

 撃墜王、正確には「第一次世界大戦撃墜王」ことスヌーピーは、テーマソング『暁の空中戦』すら捧げられた伝説の英雄でした。愛機ソッピース・キャメル号(普段は犬小屋)を操縦し、さっそうと大空を駆けめぐる操縦士として数えきれない戦勲を上げたその経歴は、第一次世界大戦から一世紀を経た現在も記憶されて、彼を不死の存在にしていました。フォッカー三葉機に乗る宿敵レッド・バロンとの空中戦の数々を経て、撃墜王の名声は死線をくぐるたびに高まったものでした。第一次世界大戦中は、夜になるとマーシーの小さなカフェへ行き、ルートビアを楽しんでいたのも懐かしい思い出でした。相棒の小鳥ウッドストックは担当整備兵でもあり、またレッド・バロンの助手ピンク・バロンでもありました。また、ドイツ兵に占領された家のフランス娘を救助したらマーシーだったこともありました。
 思わぬ来客の出現に、ミッフィーちゃんとその仲間たちは不覚をとられた気分でした。あまり賢くないバーバラすらこのビーグル犬のことは何となく知っているのです。幼稚園児や荒くれ者たちは、どうやら常連客というわけではないらしい。つまり自分たちの店の売り上げにはさほど関係ないふりの客にすぎないようで、敵情視察に来たのですから収穫がないのでは意味がありませんが、客層が重ならないと確認できればそれもデータのうちです。しかし本当のVIPがこの店の常連客としたら、店柄の格付けにも大きな影響が生じないではいられないことでしょう。ハローキティ本人が接客に現れた以上、あまり長居をするのはミッフィーたちにはリスクが高すぎましたが、おそらくこれからVIPに続き来店するだろう関係者たちを見極めずに立ち去るのも忍びないことです。
 そうだ、とミッフィーは思いつき、バーバラにお勘定させている間にジョータローたちやしんのすけたちと談判しました。何してたの、と店を出て、バーバラ。これ渡してたのよ、とミッフィーは自分たちの店の地図入りチラシを取り出しました。うちの店に来たら、あの撃墜王とやらの話を聞き出さなきゃ。そう言いながらミッフィーは犬小屋ソッピース・キャメル号の屋根にもチラシを挟みました。
 その頃店内では、ハローキティが本気モードの接客に入っていました。素性には気づきませんでしたが、女性客がいる前では決してしないことでした。ミミィら従業員たちも皆、恐怖でその場に凍りついていました。