人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(29)

 キティちゃんは三輪車に乗りそこなうと、まだ試されるんだろうか、と思いました。いったい何を調べられているのかもわかりませんが、サーカスの入団試験ならキティちゃんには一輪車より他に向いた仕事があるはずです。たとえば、と言われても困りますが、向き不向きで言うなら絶対キティちゃんには向き不向きがあるはずです。
 では今度はモニターを観てください、と係官が言いました、まずこれから流れる4本のテレビアニメを観てください。観るだけですか?この装置を持って(とコントローラらしきものを渡され)意味のわからない画面だな、と思ったらボタンを押してください。知能テストだろうか?キティちゃんはちゃんとした説明がほしいと思いましたが、最初から拒否権もないのでは質問しても無駄と悟りました。テレビアニメは『俺様のハーレムが少しずつ崩壊してるかもしれないけどたぶん気のせいかもしれない(仮)』『背徳ロボ・サドカ☆マゾカ』『もんもんびより』『野球のプリンス様』と続きました。キティちゃんは正直にモニタリングすべきか迷いましたが、後で追及されてボロが出るとかえって面倒なので言われた通りにボタンを押すことにしました。つまり二時間弱ほどボタンを連打するはめになりました。
 なるほど、と係官、一応どういうアニメなのかはわかりましたか?キティちゃんは文章題なので困りましたが、ラノベ系青春ラブコメと、制御不能暴走巨大ロボットものと、四畳半日常萌えアニメと、学園スポーツボーイアイドルものだと思います。それだけわかれば大したものです、と係官、でもわからない画面ばかりだったんですね?画面というか……。ストーリーがわからない?それもあります、それに……。どこが面白いのかわからない?そうなんですが、そもそも……。誰が何をしているのかがわからない?はい、そうです。どういう場面かわからない画面ばかりです。
 あの、すいません、トイレに行かせてもらえませんか、とキティちゃんは申し出ました。面接もかなり長引いたので、係官は許可をくれ、廊下に出て場所を説明してくれました。簡単に言えばフロアの廊下は回廊状になっているから、一周すれば必ずある、ということです。戻ってくる道筋も同じです。はい、とキティちゃんは急がず歩き出しました。まだ用件は済んでいないとはいえ、中座すると緊張がどっ、とほぐれるようでした。ただし残念ながらトイレは和式だったのです。