人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Hawklords - 25 Years On (Charisma, 1978)

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Hawklords - 25 Years On (Charisma, 1978) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLWfGw2maX1M4uNve2hvU6Amf9LgfcwVMW
Recorded : June-August 1978 Ronnie Lane's Mobile Studio at Langley Farm, Devon. Produced : Robert Calvert and Dave Brock.
Released October 1978: Charisma, CDS4014/UK#48
(Side A)
1. "Psi Power" (Robert Calvert, Dave Brock) - 6:06
2. "Free Fall" (Calvert, Harvey Bainbridge) - 5:13
3. "Automoton" (Calvert, Brock) - 1:13
4. "25 Years" (Brock) - 4:31
(Side B)
1. "Flying Doctor" (Calvert, Brock) - 5:38
2. "The Only Ones" (Calvert, Brock) - 4:14
3. "(Only) The Dead Dreams of the Cold War Kid" (Calvert) - 3:55
4. "The Age of the Micro Man" (Calvert, Brock) - 3:31
(Bonus tracks)
1. "PSI Power" [single version] - 4:26
2. "Death Trap" [single mix] (Calvert, Brock) - 3:52
3. "25 Years" [single mix] - 3:30
Bonus tracks 9-10: A & B sides of "Psi Power" single, released as Charisma CB323 in October 1978
Bonus track 11: A-side of "25 Years" single, released as Charisma CB332 in May 1979
Hawklords - 25 Years On (Bonus Disc "The Sonic Assassins" ) : https://www.youtube.com/playlist?list=PLWfGw2maX1M41yQQT7Pevd3nhIn7GMr2y
Bonus Disc tracks 1-5: Sonic Assassins: Recorded at the Queens Hall, Barnstaple on 23 December 1977
Bonus Disc tracks 6-15: Unreleased session tapes: Recorded at Langley Farm, Devon between June and August 1978
1. "Over the Top" (Calvert, Brock, Bainbridge, Paul Hayles, Martin Griffin) - 7:50
2. "Magnu" (Brock) - 3:12
3. "Angels of Life" (Brock) - 1:12
4. "Freefall" (Calvert, Bainbridge) - 7:56
5. "Death Trap" (Calvert, Brock) - 4:30
6. "The Only Ones" [acoustic demo] (Calvert, Brock) - 4:38
7. "(Only) The Dead Dreams of the Cold War Kid" [demo] (Calvert) - 3:31
8. "Flying Doctor" [live studio rehearsal version] (Calvert, Brock) - 5:37
9. "25 Years" [take one] (Brock) - 8:00
10. "Assassination" - 3:56
11. "Freefall" [take two] (Calvert, Bainbridge) - 5:28
12. "Only the Dead Dreams of the Cold War Kid" [take two] (Calvert, Brock) - 3:16
13. "The Age of the Micro Man" [take one] (Calvert, Brock) - 5:44
14. "Automoton" [full extended version] (Calvert, Brock) - 2:33
15. "Digger Jam" - 2:38
[Personnel]
Robert Calvert - lead vocals, acoustic guitar (track B3)
Dave Brock - acoustic and electric guitar, keyboards, backing vocals
Harvey Bainbridge - bass guitar, backing vocals, synthesizers
Steve Swindells - keyboards
Simon King - drums (tracks A4,B3,B4), Congas (track B2)
Martin Griffin - drums (tracks A1,A2,B1,B2)
with
Simon House - violin (tracks B2,B3,B4)
Henry Lowther - trumpet (track A1)
Les McClure - whisper voice (track A4)

 アルバム・ジャケットからしてこれまでのホークウィンドとまったく違うが、前作『クウォーク、ストレンジネス&チャーム』が例外的にあのヒプノシス(なんと!)だったので、今回はセカンド・アルバムからずっとホークウィンド専属デザイナーだったバーニー・バブルスに戻った。『宇宙の祭典』とこれが同じデザイナーのアートワークだと思うと1973年と1978年はたかだか5年とは思えない。それはサウンドにも反映しているばかりか、なんとバンド名までホークローズと改名してしまった。
 このアルバムは現行リマスターCDで2枚組になったが、本編ディスクはオリジナル・アルバムとシングル・ヴァージョンで、ボーナス・ディスクには後に発掘されたライヴ音源やアルバムのデモ段階での別テイクがCDの収録時間目一杯に詰め込んである。ボーナス・ディスクのタイトル「ソニック・アサシンズ」というのが実はホークウィンドとの平行プロジェクトとして始められた別バンドの名義で、ボーナス・ディスク1~5はそのライヴ音源になっている。だがアルバム制作中にはやっぱりソニック・アサシンズ(『宇宙の祭典』収録曲でバンドのテーマともいえる『ソニック・アタック』から発展させたバンド名)ではコアすぎないかと、ホークウィンドの変名としてはわかりやすいホークローズ名義になった。ホークローズ名義はこの1作(後に発掘ライヴも出るが)きりだが、2008年から主に70年代のホークウィンドのレパートリーを演奏するオフィシャル・トリビュート・バンドでホークローズ名義を公認されたバンドがおり、新ホークローズ自身のアルバムも4枚ほど出している。ホークウィンドのトリビュート・バンドには他にもサイケデリック・ウォリアーズなどがいて、きっとブレインストームやアーバン・ゲリラなんかもいるに違いない。

 今回はプロデューサー・クレジットにロバート・カルヴァート&デイヴ・ブロックとカルヴァートが先に来ているくらい、ホークウィンド作品(ホークローズだが)でもっともカルヴァート色が強い。メンバーを見るとソニック・アサシンズ組のハーヴェイ・ベインブリッジ(ベース、シンセサイザー)、スティーヴ・スウィンデル(キーボード)、マーティン・グリフィン(ドラムス)のうちベインブリッジとスウィンデルは全曲参加、前作のメンバーのうちドラムスのサイモン・キングはA4、B3、B4のみでB2ではコンガ、グリフィンはA1、A2、B1、B2、とキングとグリフィンの両者とも参加した上でOKテイクが選ばれたと思われる。サイモン・ハウスは今回ヴァイオリンのみでB2、B3、B4に参加。そもそも『クウォーク、ストレンジネス~』発売後のツアー中にハウスがデイヴィッド・ボウイーのツアー・メンバーに引き抜かれてしまったので、セッション・プレイヤーでツアーは乗り切ったものの、ツアー終了後バンドは一旦解散してしまったのだった。
 実はホークウィンドと名乗れずソニック・アサシンズ、ホークローズと別名を使わざるを得なかったのもバンドの一時解散にあり、事務所に名義権を押さえられてしまったということらしい。ホークウィンドとしての活動はとりあえず名義問題の解決まで置いておき、サイモン・ハウス抜きでバンドを立て直すにはまたもや大幅なメンバー・チェンジが必要だった。新ベーシストのベインブリッジは作編曲やシンセサイザーもこなし、マーティン・グリフィンはベインブリッジと同じバンド出身だった。ベインブリッジ&グリフィンの揃ったA1、A2、B1、B2を聴くと、これまでのホークウィンドにはなかった細かいリズム・アレンジが仕組まれているのがわかる。

 ベインブリッジは1991年までバンドの屋台骨になるから、このアルバムは80年代~91年と先12年あまりにおよぶホークウィンドの原点でもあり、直接カルヴァートが制作にかかわった最後のアルバムにもなった。カルヴァートは『宇宙の祭典』1973への参加で名を高め、ポール・ルドルフやブライアン・イーノ参加の『Captain Lockheed and the Starfighters 』1974、イーノのプロデュースによる『Lucky Leif and the Longships』1975の2枚のソロ・アルバムを経て『アスタウディング・サウンズ~』1976から再びホークウィンドに加わったのだが、カルヴァート中心に見ればホークローズはデイヴ・ブロック・バンドをバックにした3作目のソロ・アルバムとも言えるものだった。
 デイヴ・ブロックを中心としたホークウィンドの本流からは少し外れた位置にあり、また傑作だった前作のラインナップがたった1枚で霧消してしまったのもホークウィンドらしいが、今回も『サイ・パワー』『フリーフォール』、短いインストA3を挟んで『25年間』とA面だけでも充実した曲が並ぶ。定番の薬物ネタのロックンロールB1に続いて『ジ・オンリー・ワンズ』は同名バンドを生んだほどの名曲。ダダ・ポップ的なB3、B4はB1と並んでカルヴァートのソロ・アルバムの作風の延長にある。

 カルヴァート&ブロックの共作はまだアルバム1枚分以上あり、このアルバムのボーナス・ディスクにも収録されているが、『25年間』の制作を終えてカルヴァートは鬱病からバンドを離れることになった。次作『P.X.R.5』1979はカリズマ・レーベルとの契約満了のために『クウォーク、ストレンジネス&チャーム』と『25年間』の未発表曲を完成テイクに仕上げた事実上の編集盤だが、時期的に早いうちに作業中がなされたためアーカイヴ作品集的な寄せ集めの不統一感はなく、筋の通った新作になっている。なにより楽曲の質に残り物っぽさがなく、オリジナル・アルバムとして十分な出来を示しているのが喜ばしい。
 カルヴァートの2枚のソロ・アルバムもブライアン・イーノの初期のロック・アルバムと並んで評価の高いものだが、やはりホークウィンドと組んだアルバムは格別で、ホークウィンドもカルヴァート時代は特別な面白さがある。だがここまでが限度だったのだろうか。