人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(32)

 そんな具合に敵視している者どうしがだんだん似てくる現象はこんな休戦場でもあるもので、だんだんどころかチェブラーシカから見ればうさぎとこねこ以外にどう違うんだろう、というくらいにミッフィーちゃんとキティちゃんは似たり寄ったりに見えました。強いて言えば小市民度でしょうか?しかしチェブラーシカは小市民ぽさについては誇張されたイメージしか持っていないので、いじわるおばあさんのシャパクリャックさんに教わった知識しかありませんでした。シャパクリャックさんは若い頃はアメリカでスパイ活動をしていて、今ではFBIから、バットマンの自動車のタイヤをパンクさせ、バッグス・バニーのにんじんに農薬をかけて駄目にし、ミッキーマウスのしっぽに空き缶をゆわえつけた容疑で国際指名手配されて再入国できないのです。少なくとも本人はそう言って、毎週のようにチェブラーシカとわにのゲーナにミッフィーちゃんのお店から、やみ酒をたんまり買ってこさせるのでした。
 持ち帰りで、とチェブラーシカが空の一升瓶を1ダース、ゲーナが曳いてきた荷車から取り出すと、お家の人はよくめしあがるのね、とアギーは空き瓶をバーバラにリレーしながら不思議そうに言いました。チェブラーシカはお酒は飲むもんじゃないよ、とシャパクリャックおばあさんが言っているのを打ち明けてしまいそうになりましたが(飲むもんじゃないよ、闇で売ってボロ儲けするもんだよ)、あやういところで口外せずに済みました。ゲーナがくしゃみをしたからです。チェブラーシカは慣れっこですが、近くでわにがくしゃみをして黙りこまないいきものはいません。
 いつものように力のあるゲーナが荷車を曳き、チェブラーシカは足元を注意して小石をどけたり方向を示したりしながら帰り道につきました。もう一軒あるお店の前を通りかかると、あれは?犬小屋に見えるよ。犬小屋が二足歩行して見えるのは、どうやら底に穴があって、犬小屋をかぶった犬が歩いている様子でした。いっしょに数人の少年少女たちも歩いてきました。ぼくらには気づかないみたいだね、ゲーナはあの人たち知ってる?うむ、向こうの人たちだろうな。帝国主義の犬?今はそうは言わんのだよ、とゲーナはわにのにが笑いを浮かべ、彼らはこの店から出てきたな。われわれもあまり同じ店からばかり仕入れていると足がつくかもしれないな。そうかなあ、とひと見知りのチェブラーシカは思いました。