人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(44)

 何かにつけて忙しいがくちぐせの人ほど本当にやりたいことを見失っているものです。人に限らずミッフィーたちのようなうさぎたちにも同じことが言えますが、うさぎの場合はやりたいことなど始めからない生涯ですし、人以外の生き物は生きている以外に目的はない実存主義的存在ですから、忙しいなどと言い出すのは人間がそうなる以上に異常な状態で、いったい私たちは何のためにこんな忙しい思いをしているんだろう、という不服がミッフィーちゃんたちのお店ではくすぶりつつありました。たしかハローキティのお店にお客さんを持っていかれる前にはこのくらいの繁盛は普通のことで、ただしその頃はミッフィーのお店以外に遊び場はありませんでしたから、みんながそれを普通のことだと思っていました。ライヴァル店の出現に客足が遠のいたり戻ってきたりを繰り返してきて、初めて忙しいとか閑古鳥とかいう意識がめばえてきたのです。ミッフィーたちこうさぎにとっては、それは明らかに認識の限界を超えた種としてのデカダンスでした。
 それとともに、ハローキティと消えたリボンの一件以来、これまであった均衡が急激に崩れ始めていることに、ぼんやりのんきなバーバラでさえもが気づかないではいられませんでした。ウインはますます無口になり、メラニーすらも用心深げな様子なのがアギーの不安をかきたてずにはいられませんでした。単に私は心配性なだけかもしれない(とアギーは思いました)、でも、誰もがあえて具体的には触れないこのもやもやした感じはどうすればいいのだろう。こうした夜の職業につきもので、お店で働く全員が各種の大量の服薬で心身を維持していましたが、それも以前にはなかったことでした。もしこれがハローキティの消えたリボンのせいで、キティのお店の子たちがリボンを見つけられないでいるならば、手を貸さないでは自分たちまでおかしくなってしまうのではなかろうかと思われました。しかしお店が繁盛していること自体はけっこうなことなので、誰もが言い出せない雰囲気だったのは事実です。ボリスに偵察させたところで、根本的な解決にはならないのは誰もが感じていました。おたがいの店のボス抜きで、結託して解決に当たる以外に事態の改善は望めないと、おそらくハローキティの(キティ以外の)お店の子たちも思っているはずです。架け橋としてはボリスでは役に立たない。どうにか上手く交渉できる人材が必要です。