人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(55)

 目が醒めて枕もとの時計を見ると、長短二本の針は5時半をまわったところだった。カーテンごしの光からは屋外はどんより曇っているように思われた。数分間、それまで眠っていた頭にまだねむ気があるか探っていたが、どうやらもう眠くなさそうだと思うと友だちのことが心配になってきた。電車で30分ほど離れた町に住むその友人とは6年前に入院先の病院で同じ病室になって知りあい、偶然だが入獄・離婚・発症と似たような経歴でもあり、退院後もたまに電話で話したり会って食事したり、ピンサロやヘルスに行ったりする仲だった。
 4年前まではおたがい半年ごとに入退院をくり返すほどの障害二級の病人だったが、こちらがようやく入院するほどの病状の悪化がなくなり満4年を過ぎても、友人の方は相変わらず毎年決まって入退院をくり返していた。障害等級も現在は一級だという。普通、障害一級でひとり暮らし、自由に町を歩いている病人はいないと言われる。介助が必要か、または入院が推奨される病状と診断されているのだ。
 それからは電話するとついこの間まで入院していたり、突然入院先から電話をかけてきたりというのが2年に3回くらいの頻度であった。急性症状の入院は平均入院期間は3か月が単位だから、24か月のうち9か月は入院生活を送っていることになる。
 先週、ひさしぶりに元気か様子を見ようかと電話すると、お客さまの都合で電話ができなくなっております、というアナウンスが流れた。メールを送ってもReturnd Mail、ユーザーが見つかりません。@以前をご確認ください。User Unknown、という自動返信しかこない。また入院したのだろうか。こないだの退院は昨年11月下旬、まだ半年程度しか経たない。
 5時半なら早からず遅からずちょうどいいだろう。やはり確かめなければ心配になる。急性入院なら3日間~1週間も隔離室で安静にさせられればもう病棟に出られているはずだし、こないだの電話は滞納して止められていただけかもしれない。恐るおそる電話してみた。
 はい、とモゴモゴした声で友人が出た。良かった、電話つながらないから入院かと思ったよ。滞納してたんです。やっぱりそうか、ところで体調は大丈夫、少し舌がもつれてないか?いや、こんな時間だから、と彼。
 そこでようやく、昼寝から起きた夕方5時半ではなく、早朝だと気づいた。自宅療養中の病人どうしなんて、こんなものだ。