人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

魍猟綺譚・夜ノアンパンマン(46)

 カレーパンマンアンパンマンの行方に関するばいきんまんとのやりとりを思い出していました。アンパンマンをどこへやった?さあねえ、これじゃないの?と巨大乳頭を棒でつつくばいきんまん。あン、と情けない声(?)をあげる乳頭。これのどこがアンパンマンなんだ?おれたちだってこうなっているから来てみたんだもんね、と監視カメラをチラッと見るばいきんまん。そうか、とようやくカレーパンマンは冷静に考え直しました。監視カメラが24時間パン工場の様子をとらえつづけているのなら、ばいきんまんは何か知っているに違いないんだ。少なくとも、いつまでアンパンマンが夜のうちこの部屋にいて、いつからこんな乳頭がこの部屋に転がっていたのかを、ばいきんまんの監視カメラは映していたに違いない。
 だったらばいきんまんを締め上げればいいんだが、とカレーパンマンは思いました、もっと手っ取り早いのはしょくぱんまんが知っているかもしれない。あいつが監視カメラの電波を傍受してトースター山の自宅や自家用トラックで盗み見していることは、本人以外バレているとは気づいていない。おれたちだって仲間うちで野暮は言いたくないのだが、今回ばかりは事態が事態だ。現に朝の食パン配達とパトロールに出かけたにしては帰りが遅い気がする。もしおれとしょくぱんまんの立場が逆で、しょくぱんまんが今のおれみたいにわけのわからない拘束をされていると知ったらパン工場に戻るのは気が重いだろう。できれば事態が解決してからすいませーん、遅くなりました、と知らないふりをして戻りたいから、結局いつまでもあっちこっち寄り道しては途方に暮れることになる。そう思い、カレーパンマンしょくぱんまんの逃げ腰に少しは同情する気分でした。
 その頃しょくぱんまんパン工場の車庫でいちごミルクちゃんとカーセックスに励んでいました。どうせ工場のみんなが拘束されているわけだし、ばいきんまんたちも帰ってしまって、車庫はパン工場で唯一監視カメラの死角ができるのです。ついさきほどジャムおじさんとバタコさんの一部始終を監視カメラで観ていたしょくぱんまんとしては、いちごミルクちゃんは飛んで火に入る夏の虫でした。これをドキンちゃんが見てしまった場合しょくぱんまんに怒るのか、いちごミルクちゃんを憎むのか、その両方か、女心は複雑です。
 アンパンマンが乳頭になって初めての朝は、そういうさんざんな朝でした。