Sun Ra - Bad and Beautiful (Saturn, 1972)

Recorded entirely at the Choreographer's Workshop, New York (the Arkestra's rehearsal space) in either November or December 1961.
Released by El Saturn Records Saturn Research ESR532, 1972
(Side A) :
A1. Bad and the Beautiful (Previn, Raksin) - 2:46
A2. Ankh (Sun Ra) - 5:11
A3. Just in Time (Styne, Comden, Green) - 3:49
A4. Search Light Blues (Sun Ra) - 5:39
(Side B) :
B1. Exotic Two (Sun Ra) - 4:47
B2. On The Blue Side (Sun Ra) - 5:29
B3. And This is My Beloved (Borodin, Wright, Forrest) - 3:16
[ Sun Ra and his Myth Science Arkestra ]
Sun Ra - Piano
Pat Patrick - Baritone sax(expect A4,B2), percussion(A4,B1)
John Gilmore - Tenor sax(expect B1), percussion(B1)
Marshall Allen - flute(A1,B3), percussion(A4,B1)
Ronnie Boykins - Bass
Tommy Hunter - Drums, percussion
アラバマ州バーミンガム生まれ、シカゴ出身のジャズマン(バンドリーダー、作編曲家、振りつけ師、ピアニスト)出生名ハーマン・プール・ブロウント、のちにル・ソニー・ラーと改名、芸名は縮めてサン・ラ(1914-1993)については1956年のデビュー・アルバムから1961年のニューヨーク録音第1作までの13作を第1期サン・ラとして、このブログでも今年1月20日~3月16日にご紹介した。3か月間ジャズではサン・ラばかり聴いていたので、しばらくチャールズ・ミンガスやジョン・コルトレーンのアルバム紹介で箸休めしていたが、またサン・ラ&ヒズ・アーケストラ(Arkestra=方舟Ark+オーケストラOrchestraの造語)のアルバム紹介の続きをしてみたい。サン・ラには歿年までに約200枚のアルバムがあり、デビュー・アルバムが42歳だから79歳の享年までの実働期間を思えば中年期でデビューしながら高齢まで精力的な活動を続けた偉人だが、この人は自分のバンドを作るまではシカゴの黒人音楽界の影の顔役みたいな存在で、膨大なスタジオ・ミュージシャン仕事と作曲やアレンジ、振りつけまで手がけていた。ところがある日啓示が降りてきた。ハーマン・ブロウントとして生まれ育ったが、実は自分はル・ソニー・ラーが本名で、地球生まれの土星人だったのだ。土星人は古代エジプト人の祖であり黒人で、地球文明は黒人から発祥したが黒人への弾圧と黒人文化への蔑視のために堕落した、とソニーさんは考えた。では自分が世のために何ができるか。再び土星人の音楽(ジャズ)を広めれば人びとの心が平安になり、平和が広がり、愛しあい、より良い文明がもたらせるのではないか。
そしてソニーさんは戸籍名をル・ソニー・ラーに変え、芸名は簡潔にサン・ラ(太陽王)と変えて、自分が親分、弟子の若手ジャズマンたちをメンバーにサン・ラ&ヒズ・アーケストラを発足した。以下ご紹介済みのアルバムのリストだが、1~12が1956年~1961年にシカゴで活動しながら自主制作したアルバム(1、3のみ外部プロデューサーによる)、13がニューヨーク録音第1弾アルバムでデビュー・アルバムのプロデューサーによって再デビューを期して制作された。1と13のプロデューサー、トム・ウィルソン(1931-1978)が第1期サン・ラのスタートとピリオドを期したことになる。13はまだバンドの拠点をニューヨークに移すか検討段階にされた録音で、本格的なニューヨーク進出後のアルバムは今回の『Bad and Beautiful』こそが第2期サン・ラの第1作と言える。
[ Sun Ra and His Arkestra 1956-1961 Album Discography ]
1. Jazz by Sun Ra (Sun Song) (Transition, rec.& rel.1956)
2. Super-Sonic Jazz (El Saturn, rec.1956/rel.1957)
3. Sound of Joy (Delmark, rec.1956/rel.1968)
4. Visits Planet Earth (El Saturn, rec.1956-58/rel.1966)
5. The Nubians of Plutonia (El Saturn, rec.1958-59/rel.1966)
6. Jazz in Silhouette (El Saturn, rec.& rel.1959)
7. Sound Sun Pleasure!! (El Saturn, rec.1959/rel.1970)
8. Interstellar Low Ways (El Saturn, rec.1959-60/rel.1966)
9. Fate In A Pleasant Mood (El Saturn, rec.1960/rel.1965)
10. Holiday For Soul Dance (El Saturn, rec.1960/rel.1970)
11. Angels and Demons at Play (El Saturn, rec.1956-60/rel.1965)
12. We Travel The Space Ways (El Saturn, rec.1956-61/rel.1967)
13. The Futuristic Sounds of Sun Ra (Savoy, rec.1961/rel.1961)
(Original El Saturn "Bad and Beautiful" LP Liner Cover)

[ Sun Ra and His Arkestra 1961-1969 Album Discography ]
1. (14) Bad and Beautiful (El Saturn, rec.1961/rel.1972)
2. (15) Art Forms of Dimensions Tomorrow (El Saturn, rec.1961-1962/rel.1965)
3. (16) Secrets of the Sun (El Saturn, rec.1962/rel.1965)
4. (17) What's New (El Saturn, rec.1962/rel.1975)
5. (18) When Sun Comes Out (El Saturn, rec.1963/rel.1963)
6. (19) Cosmic Tones for Mental Therapy (El Saturn, rec.1963/rel.1967)
7. (20) When Angels Speak of Love? (El Saturn, rec.1963/rel.1966)
8. (21) Other Planes of There (El Saturn, rec.1964/rel.1966)
9. (22) Featuring Pharoah Sanders & Black Harold (El Saturn, rec.1964/rel.1976)
10. (23) The Heliocentric Worlds of Sun Ra, Volume One (ESP-Disk, rec.1965/rel.1965)
11. (24) The Magic City (El Saturn, rec.1965/rel.1966)
12. (25) The Heliocentric Worlds of Sun Ra, Volume Two (ESP-Disk, rec.1965/rel.1966)
13. (26) Nothing Is (ESP-Disk, rec.1966/rel.1970)
14. (27) Strange Strings (El Saturn, rec.1966/rel.1967)
15. (28) Batman and Robin - The Sensational Guitars of Dan and Dale (Tifton, rec.1966/rel.1966)
16. (29) Monorails and Satellites, volumes 1 (El Saturn, rec.1966/rel.1968)
17. (30) Monorails and Satellites, volumes 2 (El Saturn, rec.1966/rel.1967)
18. (31) Continuation (El Saturn, rec.1968/rel.1969
19. (32) A Black Mass (Jihad Productions, rec.1968/rel.1968)
20. (33) Atlantis (El Saturn, rec.1967-1969/rel.1969)
(Original El Saturn "Bad and Beautiful" LP Side A Label)

発売は1972年になったが『Bad and Beautiful』は寄せ集めではなくバンドが借りていた練習場で一気に録音されたアルバムでアーケストラもニューヨークに進出して初の作品であり、『The Futuristic Sounds of~』のようにサン・ラ&アーケストラのメンバー4人+セッションマン3人というのとは違う、完全なアーケストラのアルバムとして制作された。内容はサン・ラ最後の「インサイド」なジャズ作品と評され、A1のアルバム・タイトル曲は1952年の映画『悪人と美女』主題歌、A3は1956年のミュージカルで1960年に映画化された『Bells Are Ringing』(日本未公開)挿入歌、B3は1953年のミュージカル『キスメット』挿入歌と、全7曲中3曲がスタンダード、4曲のサン・ラのオリジナル曲中「Ankh」は『Sound of Joy』(1956年11月録音)初出、ヴァリエーション「Ankhnaton」が『Fate in a Pleasant Mood』(1960年録音)に収録されているので新曲は3曲になるが「Ankh」もまったく違う印象を受けるのは、このアルバムはアーケストラ史上最小の6人編成(3管+ピアノトリオ)で録音されており、ベースのボイキンスは変わらずドラムスは新人で、管の3人はレギュラーのマーシャル・アレン、ジョン・ギルモア、パット・パトリックだが今回アレンはアルトサックスは吹かずバラードのA1,B3でフルートを吹きA4,B1でパーカッションを担当するだけで、またバリトンサックスのパトリックはA1,A2,B2,B3でバリトン、A4,B1でパーカッション担当で、テナーサックスのギルモアはB1でパーカッション担当になる以外の6曲ではテナーを吹いているからA2,B2,B3はアレン抜きの5人編成になり、A3はアレンとパトリック抜きの4人編成になり、このアルバムの白眉と言えるピアノトリオ+3パーカッションのB1「Exotic Two」はサン・ラの打楽器奏法のピアノとパーカッションが爆発的な演奏を聴かせる。ただしアルバム全体的にはアーケストラ作品でも渋い方で、B1以外のオリジナル曲は「Ankh」のニュー・ヴァージョンにせよ、軽快なB2にせよ、変型ブルースの枠を出ないとも言える。やや異色なのはA4「Search Light Blues」で、スタンダード「Lover Man」のベース・パートに「Alone Together」のメロディ・ラインを乗せて変型マイナー・ブルースに改作している。『Bad and Beautiful』に続く2作『Art Forms of Dimensions Tomorrow』『Secrets of the Sun』でサン・ラ&アーケストラのジャズははっきりアウトサイドなものになるが、スタンダードを3曲含み、粗い音質の録音でいったんシカゴ時代のアルバムのムードに戻ったような本作にも(スタンダード3曲はサン・ラのニューヨーク進出宣言を表す戦略だという評もある)、このアルバムにしかない魅力がある。サターン作品の通例で、相変わらず30分という収録時間には物足りなさを感じるが。