陳信輝 Shinki Chen & His Friends - 陳信輝 CHEN SHINKI (ポリドール, 1971)

陳信輝 Shinki Chen & His Friends - 陳信輝 CHEN SHINKI (ポリドール, 1971) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL94gOvpr5yt2f6zcRggOkFNHN9Jvhikqg
Released by ポリドール・レコード Polydor MR 5003, January 15, 1971
(Side A)
A1. 海の底 The Dark Sea Dream (Shinki Chen) - 4:49
A2. 混乱の葬儀 Requiem Of Confusion (Shinki Chen) - 4:21
A3. 気違いちょうちんの自由 Freedom Of A Mad Paper Lantern (George Yanagi) - 3:10
A4. 憂うつな潜行 Gloomy Reflections (Shinki Chen) - 3:56
A5. 春日の出来事 It Was Only Yesterday (George Yanagi, Shinki Chen, ) - 4:30
(Side B)
B1. 屍 Corpse (George Yanagi) - 5:14
B2. 偽善者からの訣別 Farewell To Hypocrites (Shinki Chen, Masayoshi Kabe, Johnny Yamazaki) - 12:53
[ Shinki Chen & His Friends ]
陳信輝 Shinki Chen - Guitar, Bass, Drums, Piano
柳譲治 George Yanagi - Bass, Vocals
柳田ヒロ Hiro Yanagida - Keyboards
野木信一 Shinichi Nogi - Drums
ジョン山崎 Johnny Yamazaki - Piano, Vocals (B2)
加部正義 Masayoshi Kabe - Bass (B2)

本作は前回のフード・ブレイン『晩餐』に続く陳信輝ディスコグラフィー唯一のソロ・リーダー名義作で、リンクをご覧いただければ興味深いことですが、欧米リスナーから近年のストーナー・ロックのバンドと同じカテゴリーでリンクを張りまくられています。フード・ブレインの『晩餐』同様、本作も1989年の初CD化をきっかけに海外から注目され、折しもオールド・ファッションなスタイルを強調したストーナー・ロックの台頭とともにそのルーツ的アルバムと目されるに至りました。今や陳信輝はおそらく日本を代表するロック・ギタリストとして五指に入る知名度を獲得したでしょう。日本人の方が陳信輝を知らないくらいなのではないかと思われます。前回も上げましたが、陳信輝の参加アルバムは以下8作が全部になります。

[ Shinki Chen Album Discography ]
・パワーハウス『ブルースの新星 パワーハウス Powerhouse』(Toshiba/Express ?EP-7714, April 1, 1969)
・ザ・ゴールデン・カップス『スーパー・ライヴ・セッション』(Toshiba/Capitol CPC-8009, August 1, 1969)
・フード・ブレイン Food Brain『晩餐 Social Gathering』(Polydor MP 2100, September 10, 1970)
・陳信輝 Shinki Chen & His Friends『SINKI CHEN』(Polydor MR-5003, January 15, 1971)
・スピード・グルー＆シンキ『前夜 EVE』(Warner/Atlantic P-8081A, June 25, 1971)
・マンハイム・ロック・アンサンブル The Mannheim Rock Ensemble『Rock Of Joy』(Columbia/Denon ?YS-10107-CT, 1971)
・スピード・グルー＆シンキ『スピード・グルー＆シンキ SPEED, GLUE & SINKI 』(2LP, Warner/Atlantic P-5045～6A, March 25, 1972)
・フード・ブレイン『新宿マッド』(Recorded in early 1970 / Solid Records CDSOL-1264, 若松孝二傑作選 - 2, October 4, 2008)
(Original Polydor "SHINKI CHEN" LP Gatefold Inner / Liner Cover & Side A/B Label)

　陳信輝はもともとブルース・ロックのバンドでゴールデン・カップスの弟分的にデビューしたパワーハウスのメンバーでした。柳譲治(後の柳ジョージ)はパワーハウスのベーシスト、野木信一はパワーハウスのドラマーです。パワーハウスのリーダーでリード・ヴォーカリストだった竹村英司はすでに次のバンド(ベイサイド・ストリート・バンド)結成に向かっていたので、この陳信輝のリーダー名義作には元パワーハウスが3人まで揃うことになりました。実際このアルバムは柳ジョージ(1948-2011)との双頭リーダー作と言ってもよく、全7曲中4曲のリード・ヴォーカルと3曲の提供は柳によるものです。アルバム最終曲のブルース・ジャム的大作B2のみ柳田ヒロに替わってジョン山崎(ピアノ、ヴォーカル)、柳に替わってルイズルイス加部(加部正義、ベース)のゴールデン・カップス組が入ります。
アルバム全体が重くて暗い音色と曲調の上に全編英語詞、ミドルテンポ以下のヘヴィなテンポ設定で、楽曲に華やかさは一切ないため柳のヴォーカルも陰鬱に響きます。信輝のギターはオクターヴ奏法など小技も効いたものですが、テクニックの派手さや表現のダイナミクスをあえて抑えた演奏で、やればできる速弾きなどやってたまるかといわんばかりの演奏は信輝関連アルバムでも異色の反骨性があります。パワーハウス、フード・ブレイン、スピード・グルー＆シンキの一連のアルバム中、もっとも陰気でアンダーグラウンドな内向的攻撃性が露わな作品になったのは、ソロ名義作だけにいっそう不気味な反商業的姿勢を感じさせます。インディー・レーベルどころか大手ポリドールの制作・リリースなのも驚くべき内容でしょう。21世紀に現役アーティストがこんなアルバムをメジャー・リリースするのはまず不可能なのを思えば、45年前の日本の方がよほどロックなアルバムがあり得たことになるでしょう。