Sun Ra - Discipline 27-II (Saturn, 1973) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PLPn1E1PxviO8bw5V4iarvhKcr9R_NYvbZ
Recorded at Variety Recording Studios, Chicago in October 29, 1972.
Released by El Saturn Records SR-538, 1973 / SQ Quadraphonic LP.
Discipline Series. From Secrets Of The Sun, Volume II.
Produced by Alton Abraham, Ihnfinity Inc.
Cover Artwork by LeRoy Butler
All written & arranged by Sun Ra.
(Side A)
A1. Pan Afro - 8:02
A2. Discipline 8 - 7:56
A3. Neptune - 5:47
(Side B)
B1. Discipline 27-II
Part.A)
Part.B)
Part.C)
Part.D) - 24:29
[ Sun Ra and his Astro Intergalactic Infinity Arkestra ]
Sun Ra - Electronic Keyboard Space Age Instruments, Moog Synthesizers, Vocal Dramatizing
Akh Tal Ebah - Trumpet, Flugelhorn, Vocals
Lamont Kwamie Mc Clamb - Trumpet, Percussion
Danny Davis, Marshall Allen - Alto Saxophone, Flute
John Gilmore - Tenor Saxophone, Percussion, Vocals
Danny Thompson - Baritone Saxophone, Flute
Pat Patrick - Baritone Saxophone, Bass
Eloe Omoe - Bass Clarinet, Flute
Alzo Wright, Harry Richards, Lex Humphries, Robert Underwood - Drums
Russell Branch, Stanley Morgan - Percussion, Congas
Cheryl Banks, Judith Holton, June Tyson, Ruth Wright - Space Etnic Voices
また快作が出ました。1972年のアーケストラは精力的で、ヨーロッパ・ツアーはない代わりにアメリカ国内各地を巡業し、10月29日シカゴ凱旋録音の本作までにスタジオ録音アルバムだけで『Astro Black』『Cymbals』『Crystal Spears』を仕上げ、この『Discipline 27-II』に続いてはテレビ・スペシャルの企画から発展したサン・ラ&ヒズ・アーケストラ主演映画のためのサウンドトラックでLP2枚組相当になる代表曲のライヴ用新アレンジ再録盤『Soundtrack To The Film SPACE IS THE PLACE』(1993年に映画ソフトと同時に発掘発売)、そのうち新曲のみをスタジオ・アルバム用に正式録音した『Space Is The Place』1973が10月いっぱいで録音完了します。この時期はインパルス!レーベルとの専属契約があったはずですが、『Discipline 27-II』はこれまで通り自社レーベルのサターンから、また『Space Is The Place』はインパルス!のプロデューサー、エド・ミッチェルが先にABCレコーズ傘下の黒人音楽(主にブルース)レーベルのブルー・サムからリリースする契約があったものらしく、インパルス!もABC傘下ですがジャズ・レーベルですので、異なる対象リスナー層を想定してレーベルを振り分けたものでしょう。
本作『Discipline 27-II』は名作『Space Is The Place』につながる作風のもので、サターンには珍しくしっかりしたジャケット・アート(初回盤から表は色違い、サン・ラの詩が掲載された裏ジャケットはまったくデザインが異なる版が発売されたようです)、サターン盤にはめったにない録音年月日と録音地の明記からして、本来はインパルス!からのリリースを予定して制作されたものかもしれません。『Astro Black』の後『Cymbals』と『Crystal Spears』のリリースが滞ったため、1965年のアルバムで自信作『Secrets Of The Sun』(録音1962年)の続編という位置づけでサターンから発売してしまったのではないでしょうか。
(Original El Saturn "Discipline 27-II" LP Liner Cover & Side A/B Label)
アルバム内容はパーカッション中心のポリリズム・アフロ・フリー・ジャズで、5拍子のA1からいきなり痛快なアンサンブルが響きます。影響関係はなさそうですが、本作の音楽性はオーネット・コールマンのフリー・ジャズと共通した発想が見られ、ポリリズム(異なるリズムの同時進行)/ポリコーダル(異なる和声の同時進行)/ポリトーナル(異なる調性の同時進行)のインプロヴィゼーションによるアンサンブル、複数のソロイストの平行演奏などオーネットの歴代代表作といえる『Free Jazz』1961、『Chappaqua Suite』1965、『Science Fiction』1971、エレクトリック編成の『Dancing In Your Head』1976に似ています。
強烈なのはオーネットのアルバムは通常小編成、ピアノやオルガン等キーボード系楽器を排除してスカスカの空間を作っているのに較べ、アーケストラにはオーネット級の管楽器奏者が4人~6人ひしめき合っていることで、しかも本作のサン・ラの各種キーボード演奏はどういうことになっているやら。サン・ラが後輩に当たるビ・バップ以降のピアニストで唯一逆影響を受けたのはセロニアス・モンクで、モンクから出発して独自のフリー・ジャズを確立した人にセシル・テイラーがいますが、本作のサン・ラのプレイはモンクでもなければテイラーでもなくなんだか尋常でないことになっています。幼児が初めて与えられたトイ・ピアノで遊んでいるようなイノセンスすら感じられ、10年も前の旧作『Secrets Of The Sun』との連続性といい(同作はサン・ラ初の先駆的ジャズ・ファンク作品でした)、この頃サン・ラが連作のコンセプトにしていた「Discipline」(修練)を80年代の再結成キング・クリムゾンが借りた関連性といい(これは70年代初頭にベストセラーだった2000ページの大冊自己啓発書『The Urantia Book』に由来し、シュトックハウゼンの大作『Lichit』やクラウス・シュルツェの『Irrlichit』への直接影響があるといわれるので、サン・ラ経由の影響ではないのかもしれません)、サン・ラのアルバムは何を聴いても面白いですが、ノリノリでわかりやすいインパクトでは本作はお薦めできるアルバムです。B面がパートA~Dに分けてある必然性がまったくないのもサン・ラのユーモア感覚でしょうか。
(Original Alternate El Saturn "Discipline 27-II" LP Front Cover & Liner Cover)