人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ネギ味噌らーめん

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「ネギ味噌」らーめんではない。「ネギ」味噌ラーメンです。字面としてはネギ味噌らーめんの方がカタカナ・漢字・ひらがなが並んでよろしいのではないか。要するに錦糸切り(細切り)にした長ネギを主要な具にしたラーメンをネギらーめんというので、味噌ラーメンでなくても良い。ただし塩ラーメンではネギが強すぎてしまい、とんこつラーメンではスープとネギが相殺しあってしまいそうなので、ネギらーめんといえばしょうゆラーメンか味噌ラーメンが妥当なところかと思われるのだが、素人の勘違いだったら申し訳ない。
 そもそもネギらーめんを知ったのは、昔江口寿史のマンガで冬のラーメン屋にねじ式くん(笑)が現れて「ネギラーメンください」というのがあった。実はそれまでラーメン屋のメニューにネギらーめんというものがあるとは知らなかったので、作者の創作ギャグか練馬区あたりのローカルらーめんかと思った。以来ラーメン屋に入るたび気をつけてみると、けっこうネギらーめんをメニューにしている店があるではないか。わざわざたかがネギだくというだけのラーメンを自分では頼まないが、ショーケースの模型や写真つきのメニューを見ると4~5cmくらいの長さの長ネギを細切りにしたものとわかった。素人では1mm弱程度の細さに刻めれば上出来だが、ラーメン屋の実例写真でさ糸のように細切りしてあり大したものではある。

 物事には程度というものがあるが、スパゲッティにかける粉チーズとラーメンに乗せるネギは多ければ多いほど良い、と考えてもバチは当たるまい。そこでたまにネギらーめんを自作してみるのだが、長ネギというのはけっこう内側に粘液があっていわゆる刻みネギなら直角に刻むから粘液が絡むことはないが、縦に細切りにするとなると滑って包丁が入れづらい。賃貸アパートのキッチンというものは、というか一般住宅の基本仕様なのだろうが、身長155cm前後の人間つまり平均的成人女性の背丈に合うように調理台がしつらえてあるようで、成人男性の身長では中腰を強いられるから、長ネギを細切りする時などは椅子に座って肘の高さで刻む。これを黙々とやっていると人生は短し自炊は長し、という気になる。
 ちなみに江口寿史のマンガは「お待ち」とカウンターに置かれたネギらーめんをふと見るとラーメン屋の親父の親指が丼の中に浸かっていて、ねじ式くんはブルブルと肩を震わせながら文句を言えない屈辱に青ざめるのだった。昭和のマンガだからそんなものではあるが、ネギらーめんというと一生そのマンガのねじ式くんを連想せずにはいられないと思う。たぶん江口寿史氏の近況などに触れるたびに、遠く過ぎ去った昭和、そしてネギらーめんについて思いを馳せるような気がする。