人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

グリフォン Gryphon - レインダンス Raindance (Transatlantic, 1975)

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グリフォン Gryphon - レインダンス Raindance (Transatlantic, 1975) Full Album : https://youtu.be/LbNVCBkt4C8
Recorded at Sawmills Studios, Cornwall during June and July 1975 except "Wallbanger" which was recorded on the Manor Mobile at Brian Goodman's P.S.L. Studios in London during October 1974
Released by Transatlantic Records TRA 302, 1975
Produced by Gryphon
(Side One)
A1. ダウン・ザ・ドッグ Down the Dog (Harvey) - 2:44
A2. レインダンス Raindance (Harvey) - 5:37
A3. マザー・ネイチャーズ・サン Mother Nature's Son (John Lennon, Paul McCartney) - 3:08
A4. ハンカチーフの盗賊 'Le Cambrioleur Est Dans le Mouchoir' (Taylor, Bennett) - 2:14
A5. オルモル Ormolu (Harvey) - 1:00
A6. フォンティネンタル・ヴァージョン Fontinental Version (Taylor) - 5:36
(Side Two)
B1. ウォールバンガー Wallbanger (Harvey) - 3:33
B2. ドント・セイ・ゴー Don't Say Go (Taylor) - 1:48
B3. (ある小さな)英雄の生涯 (Ein Klein) Heldenleben (Harvey) - 16:03
[ Gryphon ]
Brian Gulland - bassoon, backing and lead vocals on A6
Graeme Taylor - guitars, backing vocals
Richard Harvey - grand, electric Rhodes, RMI and Crumar pianos, Minimoog, Copeman Hart organ, Mellotron, Clavinet, keyboard glockenspiel, recorders, krumhorns, penny whistle, clarinet on A4
Malcolm (Bennett) Markovich - bass, flute
David Oberle - drums, lead vocals (A3, A6, B2), percussion

(Original Transatlantic "Raindance" LP Liner Cover & Side One/Side Two Label)

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 グリフォン凋落の第4作はデビューからまだ3年目ですからあまりに全盛期の短いバンドでした。ベーシストは毎回サポート・メンバーが入れ替わっていましたが、このアルバムを最後にオリジナル・メンバーのハーヴェイ/ガランド/テイラー/オバリーのうち重要なギター・パートを担ったグレアム・テイラーは脱退し、レコード会社のトランスアトランティックとの契約も更新されずレーベル移籍を余儀なくされます。オイルショックの余波が原因とも言えますがアルバム4作目となるともう新人バンドではなく、グリフォンの人気はマニア向けに止まったものでしたし、レコード会社はこれ以上ブレイクを望めないバンドよりも新人の売り出しを優先するものです。他ならないグリフォン自身もデビューは変わり種のプログレッシヴ・ロックのグループと話題先行で売り出されたバンドでしたが、第2作『真夜中の饗宴』と第3作『女王失格』の2枚の名作を送り出したもののインストルメンタル曲中心の方向性はセールス面の限界を露わにしてしまった恰好でした。そこでグリフォンはオバリーのヴォーカル曲の比重を増やすことにし、本来このアルバムにはヴォーカル曲がさらに3曲ほど録音されていたそうです。ところがレコード会社側からヴォーカル曲の収録を制限され、結局インストルメンタル曲でヴォーカル曲の収録予定枠の半分を埋めることになりました。
 ヴォーカル曲ではビートルズ、というよりポール・マッカートニーの名曲「Mother Nature's Son」のカヴァーが目を惹きますが、これは元々原曲がトラッド風アコースティック・ソフト・ロックの名曲なのでビートルズのヴァージョンに見劣りしないまでもストレート・カヴァー以上にはなり得ず、バンド自身もヴォーカル曲に意欲を燃やしながら自信はあまりなかったそうで、従来路線のイギリス古楽由来の楽曲もどこか集中力に欠け、工夫と張りにも欠ける印象を受けます。グレアム・テイラーのギターも前3作のアレンジに見られたアイディアと冴えがなく、前2作では光っていたメンバーのオリジナル曲も本作では平凡に聴こえます。B3の16分におよぶ大曲『(Ein Klein) Heldenleben』もモード奏法をベースのソロイスト交替で長丁場を乗り切るばかりで、『真夜中の饗宴』『女王失格』の大曲から数等後退した印象を受ける冗長な演奏になっています。もしグリフォンに才能が欠けていたらデビュー作の次にこうなっていたようなスタイルと出来ばえで、意欲的な失敗作ならまだいいのですがこれは迷いがそのまま表れてしまったアルバムでしょう。テイラーの抜けたバンドは次作でオバリーがヴォーカルに専念、ギターとベース、ドラムスに新メンバーを迎えた6人編成でレコード会社移籍第1弾に勝負を賭けますが、勝負するなら本作の時期がぎりぎりのタイミングでした。結果的にラスト・アルバムになった次作は本作よりはよほど思い切りの良いプログレッシヴ・ロックのアルバムになりましたが、ジャーナリズムやリスナーからの反響はほとんど得られなかったのです。