人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Holiday for Soul Dance (Saturn, 1970)

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Sun Ra and his Intergalactic Arkestra - Holiday for Soul Dance (Saturn, 1970) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL3555D1CB45759DFD
Recorded at RCA Studios, Chicago, around 17 June 1960, except "Early Autumn", recorded during rehearsals at the Wonder Inn, Chicago, around the same time.
Released by El Saturn Records, Saturn Research ESR508, 1970
(Side A)
A1. But Not For Me (Gershwin) - 4:11
A2. Day By Day (Cahn, Stordahl, Weston) - 3:40
A3. Holiday for Strings (Rose, Gallo) - (4:09
A4. Dorothy's Dance (Cohran) - 3:19
(Side B)
B1. Early Autumn (Herman, Mercer, Burns) - 4:53
B2. I Loves You Porgy (Gershwin, Gershwin, Heyward) - 3:35
B3. Body and Soul (Green, Heyman, Sour, Eyton) - 6:00
B4. Keep Your Sunny Side Up (DeSylva, Brown) - 2:12
[ Sun Ra and his Intergalactic Arkestra ]
Sun Ra - percussion, bells, gong and piano
Phil Cohran - cornet
Nate Pryor - trombone and bells
John Gilmore - tenor saxophone and clarinet, percussion
Marshall Allen - alto saxophone, flute, bells
Ronnie Boykins - bass
Jon Hardy - drums
Ricky Murray - vocals on "Early Autumn"

 このアルバムはシカゴ時代のサン・ラ・アーケストラのアルバム中コルネット奏者フィル・コーランのオリジナル曲があるきりで、サン・ラ自身のオリジナル曲を含まないスタンダード集として例外的作品とされます。のち'70年代後半以降にはソロ・ピアノ作品をきっかけにアーケストラでもスタンダード曲集も手がけるようになるサン・ラですが、この時期のサン・ラのアルバムとしては『Sound Sun Pleasure!!』(1959年録音・1970年発売)、『Bad and Beautiful』(1961年録音・1972年発売)と三部作をなすスタンダード集とされますが、それらにはサン・ラのオリジナル曲も含まれますので、もっともスタンダード曲集に徹底した選曲のアルバムとして際立っています。
 このアルバムはまた1960年6月17日前後にシカゴのRCA系列スタジオ、または貸しホールで集中的に行われた録音セッションからの音源からなる5枚のアルバムのうちの1枚で、他の音源は本作に先立ち『Interstellar Low Ways』(1966年発売)、『 Fate In A Pleasant Mood』(1965年発売)、『Angels and Demons at Play』(1965年発売)、『We Travel The Space Ways』(1967年発売)の4枚に収められていました。つまりもっとも発売が後回しにされた未発表アルバムが本作だったのです。これもやはり本作のスタンダード曲集という性格によるものでしょう。

(Original El Saturn "Holiday For Soul Dance" LP Liner Cover & Side A Label)

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 というわけで、このアルバムについては聴いて楽しめばそれで良く、特に書くこともありません。A4がコルネットのフィル・コーランのオリジナル曲ですがコーランの曲を1曲入れたことに特に意味はなさそうで、あえて意味づければA面最後にオリジナル曲、B面最初にヴォーカル曲というはっきりした分断面を作りたかったのでしょうか。いや絶対そこまで計算してはいなくて、他の未発表アルバムともどもストック曲を振り分けているうちにスタンダードは1枚にまとめるか、とこの選曲にされただけと思われるのです。日本の普通のジャズ・リスナーでもおなじみの曲が少なくともA1、A2、B1、B2、B3と半数を越えます。
 これらはほとんどビリー・ホリデイのレパートリーでもあり、ビリーのレパートリーということはシナトラのレパートリーでもあります。オリジナルA4はともかくA3とB4は馴染みが薄い曲ですが、ビリーより数倍多作なシナトラとエラ・フィッツジェラルドならきっと録音があるでしょう。サン・ラで聴く「But Not For Me」や「Body and Soul」、そして「I Love You Porgy」など曲が良いからわかってはいますが、感動なしには聴けません。アーケストラの演奏は演出なのかもしれませんがスタンダード曲では妙に素朴で、そこも感動のポイントになっているのかもしれません。