アイアン・バタフライ Iron Butterfly - Live at Galaxy 1967 (Purple Pyramid/Keyhole, 2014) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLC4687D0D309EF522
Recorded live at the Galaxy Club, LA, July 4, 1967
Released by Purple Pyramid Records CLP1762 & Keyhole Records KHLP9021, 2014
(Side A)
A1. Real Fright (Ingle, Bushy, Brann) - 2:37
A2. Possession (Ingle) - 5:30
A3. Filled With Fear (Ingle) - 4:44
A4. Fields Of Sun (DeLoach, Ingle) - 3:26
A5. It's Up To You (Iron Butterfly) - 2:52
A6. Gloomy Day To Remember (Iron Butterfly) - 2:45
A7. Evil Temptation (Iron Butterfly) - 6:30
(Side B)
B1. So-Lo (DeLoach, Ingle) - 3:51
B2. Gentle As It May Seem (DeLoach, Weis) - 3:59
B3. Lonely Boy (Ingle) - 5:42
B4. Iron Butterfly Theme (Ingle) - 6:55
B5. You Can't Win (DeLoach, Weis) - 4:25
[ Iron Butterfly ]
Doug Ingle - Vocals, Keyboards
Darryl DeLoach - Vocals, Percussion
Danny Weis - Guitar
Jerry Penrod - Bass, Backing Vocals
Ron Bushy - Drums, Percussion, Backing Vocals
アイアン・バタフライは現在も活動しており、アルバム・デビューから50年にもなるバンドですが、リーダーのダグ・イングル(vo, org)を含むオリジナル・メンバーが在籍しメジャー・レーベルから新作アルバムを発表していた期間は正味4年間にすぎません。アルバムは『Heavy』'68、『In-A-Gadda-Da-Vida』'68、『Ball』'69、『Live』'70、『Metamorphosis』'70の5枚。1975年になってオリジナル・メンバーのロン・ビュッシー(ds)と'68年~'69年の2年間で『In-A-Gadda-Da-Vida』~『Live』までの3枚に参加したエリック・ブラン(g)がMCAレコーズから『Scorching Beauty』'75、『Sun and Steel』'75の2枚をアイアン・バタフライ名義でリリースしましたが、これは全盛期メンバーのダグ・イングルとリー・ドーマン(b)が不参加で実質的にはブランとビュッシーによる新バンドと言うべきものでした。その後バタフライはライヴ・バンドとしてレコード会社との契約なしに50人以上のメンバー・チェンジを経て現在に至りますが、2011年になってワーナー傘下の復刻・発掘レーベル、ライノから『In-A-Gadda-Da-Vida』制作直前の時期のバタフライをとらえた2枚組発掘ライヴCD『Fillmore East 1968』が限定発売されて音質・演奏内容ともに抜群だったため話題を呼び、次いで2014年にインディー・レーベルのパープル・ピラミッドやキーホールから立て続けにリリースされたのが『Live at Galaxy 1967』『Live at Sweden 1971』『Live at Copenhagen 1971』です。
バンド全盛期に発表された『Live』'70を加えて年代順に並べると、『Live at Galaxy 1967(July, 4)』『Fillmore East 1968(April 26,27)』『Live(May 1969)』『Live at Sweden 1971(January 24)』『Live at Copenhagen 1971(January 25)』になり、インディー・レーベルからDVD発売されている発掘ライヴ映像には『Live at Copenhagen 1971(January 25)』『Live at Danish TV 1970(April 16, 1971)』があって、コペンハーゲンはCDと同一音源ですが映像つきで楽しめるのが魅力となっています。ただし71年のバタフライはマイク・ピネラ(g,vo)とライノ・ラインハルト(g)をフィーチャーした『Metamorphosis』のバタフライなので、オリジナル・コンセプトのバタフライのライヴ演奏となれば1969年以前の音源になるでしょう。
*
(Original Purple Pyramid & Keyhole "Live at Galaxy 1967" LP Liner Cover)
バタフライはデビュー・アルバム『Heavy』'68.1発表時にはすでにオリジナル・メンバーのダニー・ワイス(g)が新バンド・ライノセロスの結成のため独立し、アルバム発表と同時にダリル・デローチ(vo, per)とジェリー・ペンロッド(b)も辞めてしまい、4月のフィルモア・イースト公演ではエリック・ブラン(g)、リー・ドーマン(b)が加入して『In-A-Gadda-Da-Vida』'68.6、『Ball』'69.1、『Live』'70.4('69.5収録、ブランは'69.12脱退)の黄金期メンバーが揃っていますから、本当に全盛期の短いバンドだったわけです。『In-A-Gadda-Da-Vida』は全世界3,000万枚を売り上げるモンスター・アルバムになりましたから、同アルバムの全曲の作者イングルは新バンドやバタフライ再結成に奔走する他のメンバーを尻目に引退してしまったのもやむなしでしょう。『Metamorphosis』とその後のライヴでは新加入のピネラとライノに仕切らせて、やる気を失ったイングルの様子がわかります。またデビュー・アルバム『Heavy』ではギタリストのワイスの活躍は目立ちますが専任ヴォーカルのデローチは3曲しかヴォーカルを取っておらず、ワイスが脱退しデローチの居場所がなくなるとともにペンロッドもつられて脱退したか、ブランの加入とともにドーマンの加入が検討され、結果メンバー・チェンジが行われたのだろうと思われます。
発掘ライヴ『Live at Galaxy 1967』はまだアルバム・デビュー前、『Heavy』のメンバーの5人編成によるライヴを現在唯一聴ける音源です。『Heavy』に収録されるA2,A4,B1,B2,B4,B5は当然として未発表曲A5,A6,A7を含み(バタフライのオリジナルですが作者不詳)、セカンド『In-A-Gadda-Da-Vida』に収録される曲はないのにサード『Ball』に収録される曲はA1,A3,B3があり、『Ball』ではA1はイングル、ビュッシー、ブランの共作となっていますがブラン加入前に原型はできていた、ということになります。ペンロッドのベースに不足感はないですがやはりドーマンほど躍動感はなく、ワイスは自分のバンドの結成のため脱退したのも納得のいく力量と個性を見せつけ、デローチは言われなければまるで存在感がありません。公式ライヴより高音質といえる『Fillmore East 1968』やラジオ音源・テレビ音源がマスターの1971年のライヴと較べると音質の点でやや厳しい音源ですが、まだデビュー前のバタフライが聴ける、しかも1967年7月という早い時期だけに残っていただけでもありがたいライヴです。実際、これらの発掘ライヴの発売で、バタフライの株は相当上がった観があります。