人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ソニー・ロリンズ Sonny Rollins - 可愛いアイシャ Isn't She Lovely (Milestone, 1977)

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ソニー・ロリンズ Sonny Rollins - 可愛いアイシャ Isn't She Lovely (Stevie Wonder) (from the album "Easy Living", Milestone M-9080, 1978) : https://youtu.be/HXVTOQBnCBE - 6:39
Recorded in August 3-6, 1977
Released by Milestone Records M-9080, 1978
[ Personnel ]
Sonny Rollins - tenor saxophone
George Duke - piano, electric piano
Tony Williams - drums
with
Charles Icarus Johnson - guitar
Byron Miller - electric bass
Bill Summers - congas

 現役最長老ジャズマンの座をリー・コニッツ(1927-)と分けあうソニー・ロリンズ(1930-)。白人のアルトサックス奏者コニッツにしても黒人テナーの雄ロリンズにしても生前のチャーリー・パーカーと共演し、パーカーのバンドから独立したばかりのマイルス・デイヴィスのバンドでパーカーやレスター・ヤングの生前にデビューし20代になるやならずでかたや白人アルトの、かたや黒人テナーの第一人者と目されてきて、以来70年あまり現役ジャズマンであり続けてきた歴史の生き証人みたいな人。同世代のジャズマンはみんな鬼籍に入り、昔日の活躍を知る人も少なくなり、巨匠とされ尊敬を集めながらもその心境をおもんばかると寂しい気もしますが、悠々自適の老年をお過ごしであることを祈るばかりです。何度も節目節目で休業、または引退しては復帰してきた人たちなので健在と伝えられるだけでもありがたく、たびたび残された数々の往年の名演を引っぱり出しては聴き直したくなります。
 元はといえばレニー・トリスターノ門下生で反商業主義クール・ジャズの象徴のようなトリスターノ系のジャズをやってきたコニッツはともかく、ロリンズはもともとポップなセンスのあるマイルスのポップな面をさらに明快にしたようなジャズをやってきたテナーマンですが、けっこうポップス曲の選曲センスも良いのに何を演ってもロリンズ節という感じがあって、なかなかマイルス門下生の後輩キャノンボール・アダレイの「Mercy Mercy Mercy」のような身も蓋もないポップ・ヒットを出すにはいたりませんでした。キヤノンボールの場合もジョー・ザヴィヌルという鍵盤奏者がいたから出せた会心のヒットであり、ロリンズが会心のポップ・ヒットを出せたのも鍵盤奏者ジョージ・デュークと組んだからこそと言えそうです。曲は当時絶好調のスティーヴィー・ワンダーが全米No.1ヒット・アルバム『キー・オブ・ライフ』'76で発表し、シングル・カットはされませんでしたがアルバム中の隠れ名曲と人気があった「可愛いアイシャ (Isn't She Lovely)」でした。邦題のアイシャとはスティーヴィーの生まれたばかりのお嬢さんの名前で、歌詞の内容が親バカだからですが原曲もスティーヴィーの歌、マウスハープ・ソロともに素晴らしいものです。ロリンズのカヴァーはほとんど原曲のアレンジそのままのバック・トラックで訥々と吹いたものですが、ポップス曲のストレートなジャズ・カヴァーではひさびさに人気を呼んだヴァージョンとなり、デヴィッド・サンボーン、ジョージ・コールマンらサックス奏者の間でスタンダード曲になりました。当時ロリンズはまだ40代でキャリア四半世紀、この曲の発表からもすでに40年経つと思うと何だか時間の流れの遠近感がおかしくなってくるような気がします。