人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラフトワーク Kraftwerk - コンサート・クラシックス Concert Classics (Ranch Life, 1998)

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クラフトワーク Kraftwerk - コンサート・クラシックス Concert Classics (Ranch Life, 1998) Full Album : https://youtu.be/3iqXfCaDdgQ
Recorded live at Ebbets' Field, Denver, USA, May 20, 1975
Released by Ranch Life Records ‎CRANCH 4, August 18, 1998
All lyrics written by Ralf Hutter and Florian Schneider except "Autobahn", lyrics by Hutter, Schneider and Emil Schult; all music composed by Hutter and Schneider.
(Tracklist)
1. Kometenmelodie - 11:49 (00:00)
2. Autobahn - 21:54 (11:45)
3. Kling Klang - 10:10 (33:40)
4. Tanzmusik - 4:16 (43:55)
[ Kraftwerk ]
Florian Schneider-Esleben - flute, strings, electronics (echo unit)
Ralf Hutter - electric organ, strings
Wolfgang Flur - percussion
Klaus Roeder - violin, guitar

(Original Ranch Life "Concert Classics" CD Liner Cover, Japanese CD Front Cover & CD Label)

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 本作はクラフトワーク公認による正規のライヴ・アルバムではありませんが、『アウトバーン』のヒットを受けたアメリカ・ツアー時にラジオ番組用に正式に収録された音源で、クラフトワーク側の意向はともかく公式にラジオ局に提供したことで法的にはラジオ局が権利を取得している音源なのでまったく無断な海賊盤とは一線を画すもので、日本盤もクラウン・レコードから発売されており輸入盤・国内盤とも正式発売CDとしてもっとも入手の容易な'70年代のクラフトワークのライヴ・アルバムとなっています。Ranch Life社版では3, 4曲目が3.「Morgenspaziergang - Part 1」、4.「Morgenspaziergang - Part 2」と曲目を取り違えており、日本盤『アウトバーン・ツアー』からは上掲の通り「Kling Klang」「Tanzmusik」と実際の曲目に訂正され、Ranch Life版も再発盤からは訂正されています。
 本作はそれまでのクラフトヴェルクから『アウトバーン』以降のクラフトワークになったもっとも早い時期のライヴ・アルバムであることに価値があり、メンバーも『アウトバーン』と同一です。後半はクラフトヴェルク時代の曲で「Kling Klang」は『Kraftwerk 2』の、「Tanzmusik」は『Ralf und Florian』の収録曲ですが、『アウトバーン』のクラフトワークのアレンジに生まれ変わっています。『アウトバーン』収録曲の「Kometenmelodie」「Autobahn」はさすがに完璧なアルバム・テイクと較べるとこの時期には機材の限界から再現度に粗がある演奏ですが、かつてデビュー年と『Kraftwerk 2』までのラルフ・ヒュッター不在の時期に直後にノイ!として独立するクラウス・ディンガー(ドラムス)、ミヒャエル・ローター(ギター)を迎えてハード・ロックになってしまった'71年のライヴとはまったく違う、クラフトワークのコンセプトに筋の入ったライヴになっており、そうした点でも『アウトバーン』をクラフトワークの真の第1作とするフローリアン・シュナイダーとラルフ・ヒュッターの意向が理解できる内容のライヴです。クラフトワークの成功でタンジェリン・ドリームも国外ツアーを行うようになり、英仏でのライヴ盤『Ricochet』'75、アメリカ・ツアーのライヴ盤『Encore』'77によってより明快なスタイルに作風を変えていきます。何よりこうした電子音楽グループがライヴでアルバム曲を再現すること自体が当時は画期的なことでした。シュナイダーとヒュッターもクラフトヴェルクの当初はライヴ活動など考えていなかったと思われ、デビュー作のドイツ国内でのヒット、『アウトバーン』の国際的大ヒットがライヴ活動を後押しする形になったと考えられるだけに、ライヴでの反響が直接に以後の音楽的方向性に反映されたのが'70年代後半のアルバムごとのスケール・アップにつながったのがクラフトワークにとって吉と出たのがわかります。それはアルバム制作のみのスタジオ活動だけでは生まれないものでした。