人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラフトワーク Kraftwerk - アウトバーン Autobahn (Philips, 1974)

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クラフトワーク Kraftwerk - アウトバーン Autobahn (Philips, 1974) Full Album + Bonus Tracks : https://youtu.be/MbKAHr6H9fs
Recorded at Conny Plank's Studio, Cologne, Germany, 1974
Released by Philips Records 6305 231 D, November 1, 1974
Produced by Ralf Hutter, Conny Plank & Florian Schneider
All lyrics written by Ralf Hutter and Florian Schneider except "Autobahn", lyrics by Hutter, Schneider and Emil Schult; all music composed by Hutter and Schneider.
(Side One)
A1. アウトバーン Autobahn (Motorway) - 22:43
(Side Two)
B1. 大彗星(鼓動)1 Kometenmelodie 1 (Comet Melody 1) - 6:26
B2. 大彗星(鼓動)2 Kometenmelodie 2 (Comet Melody 2) - 5:48
B3. 深夜そして姿なき足跡 Mitternacht (Midnight) - 3:43
B4. 朝の散歩 Morgenspaziergang (Morning Walk) - 4:04
(Bonus Tracks)
6. Kohoutek-Kometenmelodie 1 [42:49]
7. Kohoutek-Kometenmelodie 2 [46:57]
8. Autobahn (Single Version) [51:29]
9. Autobahn (UK Single Version) [54:56]
10. Kometenmelodie 2 (Single Edit) [58:05]
11. Comet Melody 2 (Single Version) [1:01:15]
12. Autobahn (Live in Denver) [1:04:03]
Kraftwerk ]
Ralf Hutter - vocals, electronics
Florian Schneider - vocals, electronics
Klaus Roder - violin, guitar
Wolfgang Flur – percussion
with
Konrad "Conny" Plank – sound engineer
Emil Schult – cover painting
Barbara Niemoller – Back cover photo

(Original Philips "Autobahn" LP Front Cover with Sticker, Liner Cover & Side One Label)

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 先行シングル「Kometenmelodie 2」のアルバム・ヴァージョンを含んだスタジオ・アルバム第4作の本作は世界的なヒット作となり、アメリカでもアルバム・チャート10位内にランクイン。シングル用に3分に短縮編集されたアルバム・タイトル曲「Autobahn」も最高位25位を記録し、すでに実験的な前衛ロックのバンドとしてカン、アモン・デュールII、タンジェリン・ドリームがイギリスではアルバム・セールス、ライヴ実績とも成功していましたが、ポピュラー音楽として英米圏に広く認知されたのはこのアルバムが初めてになりました。ヒットに伴って全欧・全米ツアーも行われ、ドイツの1実験音楽グループだったクラフトヴェルクは世界的なポップ・ミュージック・グループのクラフトワークになります。シングル「Kometenmelodie 2」と「Autobahn」は英語ヴァージョンが作られ、次作『Radio-Activity (放射線)』'75からはアルバム全編が国際版は英語ヴァージョン、国内版はドイツ語ヴァージョン、シングル曲は英語、フランス語、スペイン語など主要発売国ヴァージョンでもリリース(A面は発売国語、B面はドイツ語ないし国際版ヴァージョン)でリリースされるようになります。本作のヒットにより前3作も未発売国でリリースされましたが、EMIに移籍した次作『Radio-Activity』のリリース以後は、クラフトワークはフィリップス時代のアルバムは『Autobahn』だけ残して初期3作の追加プレスを禁じ、2009年のボックス・セット『The Catalogue』には『Autobahn』以降『Tour de France』2003までのスタジオ・アルバム8作がクラフトワークの全公式スタジオ・アルバムとしてリマスター収録されました(以降に公式ライヴ・アルバム2作)。初期3作は一時リマスタリング中とアナウンスされましたが、その後クラフトワークのオフィシャル・サイトで公開されるにとどまりました。ファン・サーヴィスでもあり、初期3作はあくまで習作としか見なしていないとの表明で、『Autobahn』からがクラフトワークの公式アルバムというのが『Tour de France』をスタジオ・アルバムでは最後に脱退した創設メンバーのフローリアン・シュナイダーと、一人でクラフトワークの看板を背負うことになったラルフ・ヒュッター共同の意向です。
 ビーチ・ボーイズのホッドロッド・チューン(ドライヴ・ソング)、「Fun Fun Fun」'64の現代版かと話題を呼んだアルバム・タイトル曲「Autobahn」は西ドイツの高速道路のドライヴを歌った曲ですが(1)前奏、(2)歌メロでI→IV→V→Iの3コード、(3)転調してもう1回歌メロ、(4)インストルメンタル・ブリッジ、これで1コーラスを形成するのがテンポの変化もないシークエンサーのオスティナートによる8ビートに乗せたまったく同じベーシック・トラックに多少のエレクトロニクス効果音、パーカッションのアクセント変化があるだけで23分弱あまり反復される楽曲です。B1、2の「Kometenmelodie」1、2は1ではテンポ・ルバートで、2はインテンポになる同じ曲で、B面は前作『Ralf und Florian』の延長線なのですがよりアイディアが整理され、この先行シングル「Kometenmelodie 2」がアルバム・タイトル曲「Autobahn」の原型になったことがわかります。B3「Mitternacht」はノン・ビートのエレクトロニクス効果音からなり、初期クラフトヴェルクの作風のミニチュア的音響実験曲。B4「Morgenspaziergang」はデビュー作A1の「Ruckzuck」以来アルバムごとに必ずあったディレイ・エフェクトをかけたフローリアン・シュナイダーのフルート曲です。クラフトワークの実験は次作『Radio-Activity』ではより精妙になり、第6作『Trans-Europe Express (ヨーロッパ特急)』'77、第7作『The Man-Machine (人間解体)』'78で完成を見ますが、決定的な出発点になったのが本作のA1「Autobahn」であり、後は「Autobahn」の完成度を高めていくのに専念したとも言えます。本作は2015年度のグラミー賞の殿堂入りアルバム賞を受賞しました。現在まで163ヴァージョンの再発盤が再プレスされているというモンスター・アルバムです。買って持っているけどあまり聴かない人も多いのではないでしょうか。ドライヴ中のBGMにも良いですが、5~6回プログラム・リピート再生をかけて睡眠時のBGMにする、という手もあります。実際そういう用途にも向いているのではないでしょうか。