人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

恋愛映画(ヌーヴェル・バーグ編)

作家主義」(リブロポート1985年刊)という10人の映画監督の巨匠のロング・インタビューを集めた本があります。これは若手映画批評家時代のフランソワ・トリュフォージャン=リュック・ゴダールエリック・ロメールらが手がけたもので、やがて彼ら自身もヌーヴェル・バーグと呼ばれる流派の巨匠になりました。お読みでなければぜひお薦めします。映画の巨匠が恋愛映画も巨匠なのは必然です。
トリュフォーロメールはほとんど恋愛映画、それも純情と奔放と倦怠の入り混じった味わいで、前者は「突然炎のごとく」「暗くなるまでこの恋を」「アデルの恋の物語」、後者は「コレクションする女」「モード家の一夜」「クレールの膝」を。ゴダールとなると更にシニカルで、「勝手にしやがれ」から「気**ピエロ」までの5年間にそれぞれ趣きの異なるフェミニズム的恋愛映画を作りました。「女は女である」「女と男のいる舗道」「恋人たちの時間」とまったく違うアプローチで女性の本質、恋愛の実態を探っています(66年の「彼女について知っている二、三の事柄」はその総決算、80年代の「カルメンという名前の女」「ゴダールのマリア」となると通常の意味では恋愛映画ですらありません)。
70年代はジャン・ユスターシュ(3時間45分の大作「ママと娼婦」)とジャック・ドワイヨン「頭の中に指」がゴダールトリュフォーの系譜として現れます。ドワイヨンは「ラ・ピラート」「ポネット」と巨匠への道を歩み、ユスターシュはビデオで自分を撮影しながらピストル自殺しました。「ママと娼婦」はトリュフォーの自伝的作品の主演俳優ジャン=ピエール・レオーを主役に起用しており、同時期製作のベルナルド・ベルトルッチラスト・タンゴ・イン・パリ」(レオーは脇役出演)とリンクする作品です。
80年代ではレオス・カラックスの鮮烈なデビューがやはりゴダールらと比較されました。「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」「ポン・ヌフの恋人」は三部作とも言えるスリリングな恋愛映画です。
ヌーヴェル・バーグと関連する日本の恋愛映画を挙げましょう。中平康狂った果実」「砂の上の植物群」「月曜日のユカ」、大島渚「青春残酷物語」、篠田正治「乾いた花」、吉田喜重「秋津温泉」「エロス+虐殺」、神代辰巳四畳半襖の下張り」。気になるタイトルの作品がこれらの中に見つかればさいわいです。