ディラン『彼女にあったら~』

『彼女にあったら、よろしくと』
もしも彼女にあったなら、よろしくと伝えてくれないか、タンジールあたりにいるはずだ
去年の春先に出て行った、そして今はそこにいるらしい
伝えてくれないか、のんびりでしかないが、おれは元気でやってると
おれが彼女を忘れてると思っていたら、違うとは言わないでくれ
どの恋人たちもそうなるように、おれたちも駄目になってしまった
彼女が出ていった晩を思い出すと、今でもさむけがしてくる
おれたちの別れはおれの心を貫いたが
彼女は今もおれのなかにいる、おれたちは別れてはいない
もし彼女と親しくなったら、おれからのキスをおくってほしい
自由になるための彼女のやりかたを、おれはいつでも尊敬していた
彼女がしあわせになるのなら、おれはその邪魔になりはしない
だが苦い味がまだ残ってる、彼女を引き止めようとしたあの晩から
おれは町から町へとまわって
いろんな人から彼女の名前を聞いた
だがやっぱり馴れることはできない、ようやく気にしないことを覚えた
きっとおれは繊細すぎるのか、軟らかくなっているのだろう
陽が沈み、黄色い月が出て、おれは過去を振り返る
すべてを思い出す、あっという間だった
もし彼女が戻って来たら、たやすくおれは見つかる
彼女にそう言ってくれ、もしも彼女にひまがあるなら
(前記アルバムより)
かつてのディランなら「彼女が出ていった晩を思うと今でもさむけがする」「彼女を引き止めようとした晩からずっと苦い味がする」などとベタな表現はしなかっただろう。そこが要だ。