人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ボブ・ディラン訳詞集・最終回

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今回で一旦最終回。ボブ・ディラン(1941-)はムラがある人だが、かつては本当に天才だった。特にアルバム第二作「フリーホイーリン」1963から第七作「ブロンド・オン・ブロンド」1966までの神がかり状態は近年編集されたドキュメント映画「ノー・ディレクション・ホーム」の通り。異様なまでのオーラを放ち、完全にステージを異空間に変えている。当時あれほど妖気を放つロック・シンガーはいなかったはず。元祖ヴィジュアル系と言ってもいい。
今回の曲はディランがフォークからロックへ転向したアルバム「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」'Bringing It All Back Home'1965より、原題'It's All Over Now,Baby Blue'。初演では泣きながら歌ったという伝説がある。ザ・バーズ(中)、13thフロア・エレヴェーターズ(下)、チョコレート・ウォッチ・バンドなど硬派のバンドが好カヴァー・ヴァージョンを残している。

『イッツ・オール・オーヴー・ナウ、ベイビー・ブルー』

行きなよ、必要なものをもって
長持ちすると思うものを
とにかくとっておきたいものは
さっさとつかんでしまえ
彼方に立つのはきみの孤児、銃をもって
太陽のなかの火のように泣いている
見なよ聖人たちがやってくるじゃないか
すべては終ったのさ、ベイビー・ブルー

ハイウェイはギャンブラーのためにある
きみの感覚を使え
偶然から集めたものをもって行け
きみの街角からきた素手の絵描きは
きみのシートに狂気のパターンを描いている
この空もまた、きみの下で折りたたまれていく
すべては終ったのさ、ベイビー・ブルー

きみの船酔いの水夫はみんな漕いで帰っていく
きみのトナカイの大群はみんな家路についている
きみのドアを出たばかりの恋人は
床から毛布をぜんぶ剥ぎとってしまった
きみの足の下で絨毯さえ巻きとられていくじゃないか
すべては終ったのさ、ベイビー・ブルー

踏み石はそのままにせよ なにかがきみを呼ぶ
のこした死者は忘れろ
彼らはついては来ないよ
きみのドアを叩いている浮浪者は
かつてきみが着ていた服を着ている
新しいマッチを擦って
新しく始めればいい
すべては終ったのさ、ベイビー・ブルー
(前記アルバムより)