人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

フレンチ・ロック(5) エルドン

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これまでの4回でご紹介したのがアンジュ、ゴング、マグマ、カトリーヌ・リベロ+アルプ。文句なしにA級といえるのはここまでだろう。後のバンドはA級とは呼べずせいぜい準A級、記憶に残る存在ではあっても前記の大物4バンドほどのスケールではない。
ピュルサー、アトールモナ・リザ、ワパスー、タイ・フォン、そして今回ご紹介するエルドン(Helden,1974-)はどれも70年代から日本に紹介され愛好家に尊重されてきたバンドだが(ワパスーだけ当時日本盤未発売か?)まあ横一線といってよい。

横一線ならなぜ準A級トップにエルドンを持ってくるかというと、まず作品数が多い。他の準A級バンドが3~6作程度の作品しか出せなかったのに、エルドンのリーダー、リシャール・ピナス(ギター、シンセサイザー)は自宅スタジオや最新式シンセサイザーまで持っていた人で、作品ごとにピナス名義、エルドン名義で次々と自主制作レーベルからリリースした。
本職は大学の哲学部教員でベストセラー連発のスター哲学者ジル・ドゥルーズの弟子。お金もあれば地位もあり、その上ロック・アーティスト(しかも自腹)と、ちょっとヤキ入れて差し上げたいようなお方だ。

どこの国でもロックにはハングリー精神がつきものだが、エルドンにはそんな貧乏ったらしい言葉は無縁だ。いやフレンチ・ロックだってみんな苦労はしている。エルドンだけが例外で、74年~82年の8年間でエルドン名義7作(うち2枚組1作)、ピナス名義5作の合計12作も出し、84年には未発表ライヴ2枚組ベスト・アルバムまで出した。調子こいてるなとしか言い様がない。その後本職が忙しくなったか資金切れかで92年まで休むが、音楽活動復帰後は文部省主宰の芸術祭に国賓待遇で来日したりしている。芸術祭だあ?

エルドンの音楽を一言で言えば、垂れ流し。これに尽きる。シンセサイザーの反復に乗せて手弾きシンセサイザー、フィードバック・ギター、生ドラムが乱れまくる。1曲8分~20分。ヴォーカルありません。曲が曲になってません。メロディ?シンセはピヨピヨ、ギターはギュイーン、ドラムは不規則リズムを鳴らしているだけです。固定メンバーになってからの第5~7作「終りなき夢」1976(画像1)、「インターフェース」1978(画像2)、「スタンド・バイ」1979(画像3)はもう絶品。酒の肴要りません。