人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(9)J・J・ジョンソン(tb)

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J.J.Johnson(1924-2001,trombone)。この連載の人選は「モダン・ジャズ名盤500」というガイドブックの「モダン・ジャズの巨人25」そのまま、おおむね妥当な人選で、好みを度外視すれば必ず通るべきミュージシャンが揃っている。だが、明らかに担当楽器の稀少性や歴史的貢献度から選ばれているな、と思われる人もいる。
J.J.はスモール・コンボかつすばやいフレーズ、正確な音程というビ・バップにはもっとも不向きな楽器、トロンボーンの第一人者だった。トランペットはもちろん、サックスにもひけを取らなかった。晩年までNo.1トロンボニストの座を守り続けた。
山下洋輔のエッセイ集にヴァーヴ・レーベルの記念音楽祭に出演した時の話があり、どのジャズマンも友好的だったがJ.J.はしつこく絡んできて閉口した、というエピソードを書いている。白人トロンボニストのカイ・ワインディングとカイの没年までコンビを組んでいたくらいだから白人嫌いではないが、愛弟子のカーティス・フラーも師から受け継いだようにジャズは黒人のもの、というプライドは高かった。

ただしトロンボーン自体は決してモダン・ジャズの花形楽器ではなかった。バド・パウェルの「バド!」1957の半数はカーティス・フラー入りのカルテットだが、ブルー・ノートのプロデューサーも「何で作ったんだろう。トロンボーンのワン・ホーンなど誰が聴きたいかね?」と言っている。音域的にも音色的にも魅力に乏しいのだ。
だがJ.J.はこの不利な楽器から最大限の魅力を引き出した。また名曲「ラメント」を書き、名編曲家でもあった(「ジェイ・アンド・カイ」1947・画像1)。マイルスの名作「ウォーキン」1954(画像2)はtp,tb,tsの3管セクステットだが、ジョン・コルトレーンの名作「ブルー・トレイン」1957(カーティス・フラー参加)の雛形になったこのアルバムのアンサンブルの鍵を握るのはJ.J.の名人芸だろう。また、大手コロンビアに迎えられ、ワン・ホーンの傑作「ブルー・トロンボーン」1957(画像3)を出している。やっぱりすごい人なのだ。

テレビ放映で見たヴァーヴ記念祭のステージでは70歳には見えないJ.J.だったから、病苦(前立腺癌)から自殺した報は悲しかった。最後までプライド高い人だったのだろう。