人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(35c)ポール・チェンバース(b)

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チェンバースの第一作はコルトレーンのワン・ホーンで佳作となったが、ブルー・ノートに移籍した第二作のセクステットと第三作のクインテットはいまいちだった。チェンバースのベースはいつも以上に張りきって弾むのだが、2管フロントが一本調子で、その上トランペットは勢いだけが持ち味。名指しは避けるがドナルド・バードさんです。音色に張りがあるしテクもあるから最初はやるじゃん、と思うがソロにメリハリがまったくない。テクだけあって表現力がない。そういう人。マイルスとはまったく逆。
そこでブルー・ノートは管楽器なしのギター+ピアノ・トリオを第三作に指定。レパートリーはマイルス・クインテットの定番曲ばかりだがケニー・バレル(ギター)、ハンク・ジョーンス(ピアノ)、アート・テイラー(ドラムス)とマイルス・クインテットとは無関係、しかも渋い。この第四作「ベース・オン・トップ」57.7(画像1)は選曲・人選・演奏全ての面でチェンバースの最高作と名高い。

ブルー・ノートとのリーダー作はここまでで、事実上の共同リーダー作で傑作「ロイ・ヘインズ・トリオ/ウィー・スリー」58.11を挟み、第五作「ゴー!」59.2(画像2)と第六(最終リーダー)作「1スト・ベースマン」60.5(画像3)はシカゴの黒人大衆音楽レーベルのヴー・ジェイから出る。
「ゴー!」はケリー(ピアノ)にドラムスは新旧のマイルス出のフィリー・ジョーとジミー・コブ、フロントは柔軟な新人フレディ・ハバード(トランペット)とやはりマイルス出のキャノンボール・アダレイ(アルト)というご機嫌な出来で、こっちを最高と言う人も多い。演奏中に盛り上がってかけ声まで飛び交う。すごくいい雰囲気のハードバップ名作。
ところが第六作「1スト~」ではピアノはケリーだがトミー・タレンタイン(トランペット)、カーティス・フラー(トロンボーン)、ユゼフ・ラティーフ(各種サックス)、ドラムスはレックス・ハンフリーズという癖のあるメンバーですっきりしない。ヴー・ジェイには60年2月に新人フランク・ストロジャー(アルト)の「ファンタスティック!」でケリー、コブと共に新人ブッカー・リトル(トランペット)を含む録音があるが、新旧世代混合からかミスが目立つ。感覚が違うのだ。25歳にしてチェンバースは旧世代のジャズマンになりつつあった。