人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補1d)バド・パウエル(p)

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Bud Powell(1924-1966,piano)。
53年2月に1年半の再入院から退院してきたバドは、極端にムラの多い演奏をするピアニストになっていた。クラシックのピアニストであれば技術と表現力はそのまま判断材料になるだろうが、ジャズのようにテキストの存在が絶対ではない音楽では演奏の達成度をどこにおけばいいかわからなくなる時がある。バドはパーカーのように自意識のある天才ではなくて天然だったから、バドの狙いはどこにあったのか唖然とするような演奏が次第に増えていくのだ。

Bud Powell Trio(画像1)53.5.15,9
-は前回掲載の「ジャズ・アット・マッセイ・ホール」の前座で演奏したトリオのライヴで、このコンサートはチャールズ・ミンガス(ベース)とマックス・ローチ(ドラムス)が自主レーベルの立ち上げの第一弾アルバム用にライヴ録音したのだった。ピアノ・トリオでやった前座演奏はなかなか良い。'Embraceable You'はパーカーの名演もあるが、バドならではの儚い美しさがある。
ところがディジー・ガレスピー(トランペット)、チャーリー・パーカー(アルトサックス)を加えたオールスター・クインテットではバドは痛々しいほどボロボロで、'All The Things You Are'などコードすら見うしなっている。前座演奏とクインテット演奏の幕間に一服してきたとしか思えない。バドの演奏に焦点を当てて聴くと悪夢のようなアルバム。

53年8月の録音は「芸術」「アメイジングVol.2」でご紹介した。円熟した名演と言って差し支えない。
バドは58年年末の渡欧までヴァーヴに6枚、RCAに2枚のアルバムを残している。だいたい2作ごとに好調・不調の波がある。
ブルーノートへの第3作、
Bud!(画像2)57.8.3
-は好調の部類だろう。ピアノ・トリオの5曲はすべてバドの新曲で、'Blue Pearl'は名曲。なぜかトロンボーンカーティス・フラーがワンホーンで3曲に参加したが、バドの録音を説得させた労で起用されたらしい。「トロンボーンのワンホーンなんて誰が聴きたいかね?」とプロデューサー(ブルーノート社長)にまで言われている。

次のブルーノート第4作、
Time Waits(画像3)58.5.25
-の解説は次回で。