バド・パウエル・トリオ Bud Powell Trio - ラウンド・ミッドナイト 'Round Midnight (JMP, 2006)


Recorded TV Broadcasting "Montmartre Jazz" live at the Cafe Montmartre, Copenhagen, Denmark, Early 1962
Released by Jazz Music Performances Video as the DVD "Bud Powell in Europe: Paris1959-Copenhagen1962", Jazz Music Performance 2869079, 2006
[ Bud Powell Trio ]
Bud Powell - piano, Niels-Henning Orsted Pedersen - bass, John Elniff - drums
セロニアス・モンク(1917-1982)の愛弟子バド・パウエル(1924-1966)は二十歳の時にこの「ラウンド・ミッドナイト」を初録音したクーティ・ウィリアムズ楽団に所属しており、何となく作者モンク(著作権上では共作者が二人いるのは同曲がバーニー・ハニゲンの歌詞つき、またバンド・リーダーでハニゲンと共同アレンジャーのウィリアムズの面子を立てた登録だったからです)と並んで「ラウンド・ミッドナイト」最多録音ピアニストというイメージがあるからですが、実際は生前発売のアルバムではヴァーヴの『バド・パウエル'57』('54年12月録音)でしか演奏していません。ブルー・ノートへの5枚の『アメイジング・バド・パウエル』のシリーズでも演奏していないのは、ちょっと意外な気がします。バドの絶頂期は通常'51年までの初期で、'52年は入退院生活を送り、'53年の復帰からの中期以降は好調と不調の波が激しくなり、唯一のヴァーヴ録音の「ラウンド・ミッドナイト」のテイクは非常に微妙な線を揺らいでいます。後期は後期で微妙なのですが『セロニアスの肖像』('61年12月録音)、『バド・パウエル・イン・パリ』('63年2月録音)のような名盤もあり、スタンダード曲集の後者はともかくモンク曲集の前者に「ラウンド・ミッドナイト」のスタジオ録音がないのはあえて外したのかもしれません。
バドが同曲をライヴで演奏するようになったのは発掘音源では後期に当たる晩年(パリ移住~帰国の'59年~'64年、帰国後逝去までの''64年~'66年)の時期ですが、没後発表された膨大な、CD4枚におよぶ1953年バードランドのレギュラー出演のラジオ放送音源、CD8枚におよぶ1962年4月のストックホルムのクラブ「ゴールデン・サークル」でのライヴ音源でも愛奏曲「Like Someone in Love」や「There Will Never Be Another You」、バップ・スタンダードの「Bean and Boys」「Salt Peanuts」「Shawnaff」「Conception」ほどにも演奏しておらず、晩年のバドが愛奏曲としたのは「I Remember Clifford」ですが、「ラウンド・ミッドナイト」と「クリフォードの思い出」ではどちらもバラードなので「クリフォード~」をやる時には「ラウンド・ミッドナイト」はやらない、またその逆もという具合だったようです。また発掘音源ではチャーリー・パーカーとのジャズ・クラブでの共演ライヴで'50年と'51年の2種のラジオ放送音源が'70年代にオフィシャル化されており、その印象もあって「ラウンド・ミッドナイト」の初録音ピアニストであるバドには初期から多くの同曲の演奏があるように錯覚しますが、実際には自己名義でのトリオないしソロでの演奏は『バド・パウエル'57』収録の'54年12月末のトリオ演奏が初期~中期では唯一の公式録音であり、未発表テイクや発掘ライヴ音源もありません。むしろ生前発売アルバムでこの曲の最多演奏をしていたピアニストはビル・エヴァンス(11回)ではないでしょうか。

Recorded in New York City, August 22, 1944
Released by Majestic Records as 10-inch 78prm Single "Somebody's Gotta Go / 'Round Midnight", Majestic 7119
[ Cootie Williams and his Orchestra ]
Cootie Williams - trumpet, leader, E.V. Perry, G. Treadwell, L. Wright, T. Stevenson - trumpet, E. Burke, E. Glover, B. Horton - trombone, Eddie "Cleanhead" Vinson, Frank Powell - alto saxophone, Sam "The Man" Taylor*, L. Pope - tenor saxophone, Eddie De Ventul - baritone saxophone, Bud Powell - piano, L. Kirkland - guitar, C. Pruitt - bass, S. Payne - drums
*何とサム・テイラー在籍!


Recorded at the Fine Sound Studio, New York City, December 16, 1954
Released by Norgran Records as the album "Jazz Original", MG N-1017, 1955 and Reissued by Verve/Norgran Records as the album "Bud Powell '57", MG N-1098, 1957
[ Bud Powell Trio ]
Bud Powell - piano, Percy Heath - bass, Max Roach - drums
生前未発表ながら没後発掘音源に「ラウンド・ミッドナイト」はかなり多く、今回上げた以外にもパリ生活でバドのパトロンだったジャズ・マニアのフランシス・プードラ宅でのソロ・ピアノ演奏が録音年度しか判明しませんが『Ups'n Downs』'73(一時パリに戻った'65年録音)、『Tribute To Thelonious'64』'86('64年録音)、『Eternity』2004('62年録音)と3種あり、プードラ録音によるピアノ・トリオ演奏のライヴもニューヨーク帰国直後の『Return To Birdland, '64, Vol.1』'86('64年9月30日録音)があります。帰国後のバドはフリー・ジャズ系の若手ジャズマンには崇拝されていましたが、バドと同世代のジャズマンには敬遠されており、若手ジャズマンと遺作アルバムを1枚インディー・レーベルに残した後は病状が悪化し、絶食による栄養失調に肺炎を併発し42歳で早逝しました。翌'67年には小学校時代からの同級生だったエルモ・ホープが亡くなります。ホープはジャズ界では落ちこぼれと見られていましたが、バドもほとんど再起不能と見られて似たような境遇に陥っていたようです。
上記以外の晩年のバドの「ラウンド・ミッドナイト」演奏は今回上げた'62年初頭のコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルでのTV放映ライヴ、'62年4月のスイスのジェネヴァのジャズ・クラブのライヴがありますが、バド逝去から2年後にいち早く発掘された'61年のパリのジャズ・クラブ、ブルー・ノート・カフェのライヴはバドより早くパリに移住していたモンクの盟友でビ・バップの開祖のドラマー、ケニー・クラーク(1914-1985)との再会レコーディングで、ベースはマイルスのパリ録音サウンドトラック・アルバム『死刑台のエレベーター』'57でテナーのバルネ・ウィランとともにフランスのジャズ界から参加していたピエール・ミシェロ(同作もケニー・クラークがドラムス)です。ミシェロ、クラークとのトリオでスタジオ録音した名盤が『セロニアスの肖像』で、いわばこれは同作のライヴ・ヴァージョンです。映像が雄弁でベースが16歳の神童ベーシストのペデルセンなのも嬉しいカフェ・モンマルトル、音質抜群で演奏の切れ味もいいジェネヴァ(現地ジャズマンの二人のうちベーシストのファースト・ネーム不詳)もいいですが、フリー・ジャズのレーベルのESPから発売されたブルー・ノート・カフェのライヴは異様にクリーンでざっくりした音質、テーマ・メロディーまでブラシでピアノとユニゾンしてしまうはりきりすぎのクラークのドラムスが異常空間を作り出していて、この張り倒すような演奏を聴くとデリケートなエヴァンスはともかく、セシル・テイラー亡き今チック・コリアやキース・ジャレットなどお呼びでないという感じすらします。

Recorded at the Hot Club, Geneva, Switzerland, February 1, 1962
Released by Gambit Records as the album "Live In Geneva 1962", Gambit 69326, 2009
[ Bud Powell Trio ]
Bud Powell - piano, M. Cortesi - bass, Jackie Cavussin - drums

Recorded at the Blue Note Cafe, Paris, France, Probably April 1961
Released by ESP-Disk as the album "Blue Note Cafe, Paris, 1961" as ESP 1066, 1968
[ Bud Powell Trio ]
Bud Powell - piano, Pierre Michelot - bass, Kenny Clarke - drums