人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アガサ・クリスティーを想う

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画像は1978年11月に早川書房から発行された文庫判32ページの無料パンフレットで、クリスティー作品「ナイルに死す」の映画化作品「ナイル殺人事件」の日本公開のタイアップでクリスティー・フェアを行った、その一環で配布されたものだ。78年11月というともう35年も前で、クリスティーは1890年生まれ、1976年に85歳の長寿で逝去。30歳の作家デビュー以来没年の前々年まで新作を発表し、81歳で爵位を受けている。

ナイル殺人事件」78の前に、やはりオールスター・キャストの大作「オリエント急行殺人事件」74が特大ヒットしており(もちろんクリスティーの同名作品原作)、またクリスティーの逝去の後に、第二次大戦中(クリスティーは当時52~53歳で通常の作品発表も年間2作ペースを保ちつつ、「カーテン」はエルキュール・ポアロの、「スリーピング・マーダー」はミス・マープルの、クリスティー作品の二大名探偵の最後の事件として書かれた)遺作として執筆された二作が刊行され、特に先に発表された「カーテン」はファンのみならず衝撃的な内容で大ベストセラーになった。翌年の「スリーピング・マーダー」は静かに別れを告げるようなしみじみとした佳作で、これも当然ベストセラーになった。この「クリスティー小百科」は、そういうタイミングで行われたクリスティー・フェアの記念品になる。

この小冊子は実に丁寧で、エッセイ三編(植草甚一仁木悦子、当時大学生の山口雅也)、名探偵紹介、クリスティー年譜、映画「ナイル殺人事件」、ア・ラ・カルト(逸話集)、著作リスト、クイズ、著名作家からの賛辞集からなる(編集後記まである)。
著作リストは長編探偵小説66冊、短編集20冊、戯曲5本、普通小説6冊、クリスマス物とノンフィクションと自伝が各1冊。後に拾遺短編集が1冊。当時中学二年生のぼくは著作リストに読んだ印とランク付(ABC)をしている。長編探偵小説は62冊、短編集は18冊読んでいる(後に残りも読破)。

映画「ナイル殺人事件」はゴールデン・タイムにテレビCMが放映されるほど宣伝が派手だった。ちょうど角川書店が「犬神家の一族」を皮切りに「白昼の死角」「人間の証明」と映画化と文庫化のマルチメディア戦略で横溝正史高木彬光森村誠一を大宣伝していた頃だった。