・3月30日(火)曇りのち晴れ
「さて、特に希望しなかったからビーチバレーに編入されたはいいが、なにしろ中学生の体育の授業以来だからどんなフォーメーションかも覚えていない。陸上は得意だったしマラソン大会でも学年10位以内だったが球技は嫌いだった。皆して玉の行方を追いかけてどうしようというのだ。唯一バスケは短期決着型なので気に入ったが一般に球技は突き指し易く、ギターの練習に支障を来すからバスケみたいに激しいと危ない。野球やサッカーは細かいルールがあるし、玉を投げるだの打つだの、足や頭ならいいが手は使えないだの原則的に馬鹿馬鹿しい。バレーなど最たるもので、トスを上げるのは指を傷めるからギター少年なら指を庇ってしまう。これを自己防衛本能という。床にボールが落ちるのは重力の法則だからこんな球技のどこが面白いのだ?」
「ビーチバレーのルールかバレーボールもそうだったか、とにかく5対5のフォーメーションが組まれ、まず両チームの全員が一巡するまでサーブの練習。平均年齢が50歳を越える割には皆さん結構やる。一打目、まるで入らない。手を広げて打つのよ、とやたらと元気なKdさんにアドヴァイスされ、なるほどビーチバレーだと接触面を広げると上手くいく」
「脚の悪いUzさん(お酒)とMさん(飲酒運転事故)はストレッチだけ参加して見学席、Atさん(脳溢血歴があり激しい運動は危険)は特別席で審判兼スコアボード係。意外にもセットマッチ(マッチアップ?)15点でこちらのYnさん、Tkさん、お照さん、OT嬢チームが勝ってしまった。女性三人が若かったのもあるだろう」
「5分休憩後に第2試合します、その間にエレヴェーターを使わなければ降りられない地下のトイレに案内され(体育館は冷える)、この第一病棟は閉鎖病棟だからすべてのドアに施錠されているのに気づく。体育館に戻ると卓球は自由に交替したりダブルスしたりで楽しんでいる様子で、バレーボールのコートでは張ってあるネットをそのまま使って二組でバドミントンをやっていた。Mさんの隣に座って休む。右隣のTkさんはバレー中から楽しそうで、今も隣のOT嬢におっとりと、なんかまったりしてきますね、と話していた。彼女がアル中である事情が想像つかない。…結局そのまま後は自由時間になり、最後にまたストレッチをしてアルコール科病棟へ戻る」
(続く)