・4月5日(月)雨
(前回より続く)
「コンビニで目当ての週間少年ジャンプをさがしあて『HUNTER×HUNTER』読み、たしかこの五年ほどは断続連載で、作中時間は半日も経過していないんだよな、と思うと感慨深い。この五年間に自分の身の上に何があったか、発症、離婚、入獄、生保受給、障害者認定に入院、入院、そして今また入院。週間文春の小林信彦、近田春夫の連載と、堀井憲一郎のコラムが『ライ麦畑でつかまえて』の新旧翻訳を西日本と東日本の口語文の対照と解釈していて面白かった」
「平穏で無口な昼食。午後は一時半から環境整備だが昼食後はデイルームはがらんと人がいなくなる。一人で新聞を読んでいたが、食後の喫煙室でKくんが、おい、まただぜ。HAがナースステーションの窓口で何か訴えていた、その続きを目撃した。すいません、婦長さんいますか!もう我慢できません退院させてください!明日?一人?三階?…彼女が去りしばらくしてKくんが来る。新聞読んでたのか。ついでに面白い話もあるよ。先ほどのHAの様子を話し、どう思う?退院するんなら結構じゃないか、騒がしいやつが一人いなくなってホッとするぜ。退院ではなく第三病棟から一人降りてきて交換に彼女が移るのかもよ」
「事情は本人がわざわざ話しに来た。夕食後、UzさんとTkさん、Kくんの雑談中に割り込んできたらしい。一服しに通りかかった時には話の半ばだった。とてもじゃないけどうるさくて夜も昼も寝られないよ(同室のMtさんを指すのは明白)!こんなんじゃますます病気がひどくなるから退院する、って婦長に話したらとりあえず待って、今日から一人部屋にするから、三階で男の退院患者がいるからそこに移してくれるって。それだけ言って去った」
「嫌いだ、生理的に受けつけん、とKくん。誰のこと?とUzさん。Tkさんも当惑した顔。HAさんだろ。何でですか?とTkさん。Kくん本人やKdさんに訊けばわかりますよ。それ以上加わらず部屋に戻ると待ちかねたようにAtさんに酒歴の推敲を頼まれ、Ynさんは明後日の退院に備えて宅急便の荷造り中。私が最後だから男の人もういいわよ、というKdさんの声が聞こえて入浴しに行くと脱衣場で、先客のNk老画伯がスペイン語訛りで、あの子はどういう病気なの?Skが朗々と、統合失調症、平たく言えば気ちがい、今は薬が効いているようですがね」