人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(5)

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

注文を終えて安堵した様子の両親にムーミンは自分も何か言おうとしましたが、その時ふと気づくと、ムーミンパパもムーミンママもあらぬところを凝視しているので、つい忘れて自分もそこに見入りました。
ムーミンパパは気を取り直し、そうだねママ、それにムーミン、と息子に目をやると宙の一点を見つめているので、はて、と自分も目をやります。
ムーミンママもハッと気づきましたが、とかく突飛な言動が目立つ夫はともかく息子までが夫と同じ虚空に目を凝らしているのは尋常と思えず、同じ視線の先を見つめました。
見つめるうちにムーミンもハッと気づきました。何か大事なことにです。
それをきっかけにつられてスノークも見つめました。つられてフローレンも見つめました。つられてヘムレンさんも見つめました。つられてヘムル署長も見つめました。つられてスティンキーも見つめました。つられてミイも見つめました。つられてミムラも見つめました。つられてジャコウネズミ博士も見つめました。つられてトフスランとビフスランも見つめました。あのスナフキンすらつられて見つめました。
それでもやっぱりムーミンは自分も何か言おうと思いましたが、ムーミンパパもムーミンママもあらぬところを凝視しているので、つい忘れて自分もそこに見入りました。
ムーミンパパは我にかえってふたたび妻子に目をやると、やはり宙の一点を見つめているので、はて、と自分も視線を戻します。
ムーミンママもハッと気づきましたが、夫の奇行は病癖としても息子までが夫と同じ虚空に目を凝らしているのはやはり尋常とは思えず、ふたたび同じ視線の先を見つめます。
見つめるうちにムーミンもハッと気づきました。今度は忘れるとやばいことでした。しかしその目は宙の一点にすえたままです。
それをきっかけにまたもやスノークも見つめました。またもやフローレンも見つめました。またもやヘムレンさんも見つめました。またもやヘムル署長も見つめました。またもやスティンキーも見つめました。またもやミイも見つめました。またもやミムラも見つめました。またもやジャコウネズミ博士も見つめました。またもやトフスランとビフスランも見つめました。あのスナフキンすらまたもや見つめました。
ですが、みんなが視線の先の空間に気をとられている間に、陰謀は着々と進行していたのです。