人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記243

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(人物名はすべて仮名です)
・5月17日(月)晴れ
(前回より続く)
「勝浦くんの別れた奥さんが二人ともデリヘル嬢からの水揚げ、というのは彼自身も滝口さんや梅崎さんにべらべら話していたこととはいえ、他人が吹聴するのははしたない。うっかり口を滑らしてしまったので、それもどこまで本当だか!と中里さんが返してくれたのはありがたかった。それ以上その話題はしない、ということになるからだ。そういえば…と中里さんは先に退院した木島さんがいかに無神経で自分勝手な女性だったかを話し、じゃあ他人の配膳を手伝わない、っていう投書箱の件はやっぱり木島さんかと納得し、中里さんはついでに何人かなで斬りにして、短所が上がらなかったのは女性では滝口さんだけだった」

「同じ部屋だった時は楽しかったわ、女同士で話題に出ることなら他愛ない話でも真面目な話でも通じるのよ。なるほど、滝口さんが雑談の途中で部屋に用事があって戻り、なかなか帰らず、しばらくしてデイルームに戻ってきて、ごめんなさい、女同士だといろいろあるのよと言っていたことが何度かあったが、そういうことか。中里さんは滝口さんには感服していたようで、本当に頭がいいし気が回るから滝口さんといると楽しいけど、だから勝浦さんなんかが甘えてくるのを突き放せないのよ、佐伯さんと一緒で異性にも同性にも勝浦さんみたいなのにも好かれるタイプよね」

「再び勝浦くんの話題に戻り、勘違いしてるわよね、ここは友達を作りにきた所じゃない。ごもっとも。それから中里さんの酒歴作成を手伝ってほしいとなり、自分の酒歴の下書きと本文のコピーを持ってきておおよその中里さんの経歴を聞いて構成を立てていると、突然、中島さんがふざけんじゃねえよ!と怒鳴って自室に引っ込む。別のテーブルにいた尾崎さんが、おれに言ったのか?中島さんの通り道にいたので、違うみたいだよ。喫煙室の方見てたわね。喫煙室には金子。中島さんが釈明に戻ってくる。さっき金子にお前呼ばわりされたんだ。お前呼ばわりされる筋合いはない。ちゃんと言ってくる、と喫煙室へ向かった。巻き込まれないようにしましょう。そうだね、と中里さんと廊下を引き上げる。ちょうど消灯時刻になる(註)」
(註)中里さんの経歴を聞いたのに触れていない。それどころではなかったとはいえ、不思議な気がする。