人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記250

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(人物名はすべて仮名です)
・5月19日(水)晴れのち雨のち曇り(明日退院)
(前回より続く)
「昼食後に滝口さんからメール、勝浦くんは送迎が実現したので機嫌良かったから心配ない、予定通り明日は滝口さんの外来終了で待ち合わせて最寄り駅まで送りますとのこと。喫煙室で一服しているとさかんに明日退院したら即病院前のコンビニで飲酒し抗酒剤中毒で再入院するよう冷やかされる。今日の掃除も自然に役割分担が決まりうまくいく。冬村さんが仕切って真面目な人たちが真面目に動いていた時は、真面目さがかえって混乱を招いていたが、およそリーダー的でない人物が最古参になると各自が周囲の進行を気づかって円滑に手順が運ぶようになったのは皮肉だ。今朝の全体会なども池田くんと金子が誰も理解できない怪発言をしていたが、それすらも大勢にまぎれて波乱が立たなくなっている」

「元院長、現理事長の酒害教室は一時半から一時間。充電しておいた携帯で先の滝口さんからのメールに、了解、ありがとうの返信。部屋に戻って点呼待ち。吉村くんは当初の診断名は鬱病で、それから統合失調症に変遷したという。二歳上のお兄さんも統合失調症と過度の肥満で長い入院生活を送り、四年前に入院先で急死している。気の毒な話なので深く訊けないが、急死というくらいなら肥満による身体症状、つまり心不全や高血圧症で、長期入院でも改善できなかったとは想像を絶するが、確かにこれまでの入院でも身体症状の回復しない人は肥満・痩身ともにいた。病院は栄養管理はできるが、運動を含めた健康な代謝までは薬剤でしか補助できない。免疫力は低下するから、一時的に実家に帰った時に感染症を拾ってきただけでも重篤に陥る可能性はある。だが入院治療のデメリットを吉村くんに言うのは酷だ」

「吉村くんが診断名の前後で症状は変っていないのを気にしているので、それはよくあることで、症状と診断名は分けてとらえる。診断名というのは簡単に言えばどういう病気として治療するか、ということだからと説明する。具体例が知りたそうなので、たとえばこの病院で知った患者さんではね、と竹内メモを思い出して竹内症状の概略を話して、現在のところ一番適切な治療法から診断名を取るわけだよ。動物を分類するのとは違うんだ。吉村くんも理解できたかどうかはともかく、安心したようだ」
(続く)