人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Ose-"Adonia"France,1978

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Ose-"Adonia"France,1978
A1. Approche Sur A 16:00
https://www.youtube.com/watch?v=4C5YRamG-iE&feature=youtube_gdata_player
A2. Orgasmachine 3:45 to
B1. 29 h 08 mn 6:55
https://www.youtube.com/watch?v=OJ2TX_20P4o&feature=youtube_gdata_player
B2. L'Aube Jumelle 9:48
https://www.youtube.com/watch?v=Vgdnpq_hki0&feature=youtube_gdata_player
B3. Retour Sur Adonia 3:34
[Line-up / Musicians]
- Richard Pinhas / Guitar and electronics
- Francois Auger / Drums
- Herv?? Picart / Guitar and electronics
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(エルヴェ・ピカール近影)
Emblematic spacey-electronic rock project from France with members of Heldon (Fran??ois Auger and Richard Pinhas) with the presence of the multi-instrumentalist Herv?? Picart. They published one album entitled "Adonia" (1978) on Egg Records. A dynamic fusion between frantic bluesy guitar chords and cyber-electronic grooves within a grandiose tripped out effervescence. (Quote from progarchives.com)
 (キング-廃盤)オズは主に「ベスト」というフランスの音楽誌で評論家として活動しているエルベ・ピカールが作ったバンドでメンバーも実際にはピカール一人だけである。このアルバムではゲストにエルドンのリシャール・ピナスとフランソワ・オジェが参加し、エルドンに近い演奏をしているがエルドンよりは幾分けだるく重い雰囲気を持っている。アドニアとは架空の惑星でジャケ裏にストーリーが書かれてある。バンド名もフィリップ・ファーマーの小説からとられていてSF的要素が強い作品に仕上がっている。圧巻はB1のピナスのギターソロでオーガズム・マシーンという享楽を得る機械で人々が狂気の宴を繰り広げてゆくのを見事に表現している。クレジットではピカールが曲を書いているがピナスとの共作。(「マーキー増刊号・ユーロ・ロック集成」1987刊より)
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 幸いサイト上にほぼ全曲がアップされていたし、以上二つの引用でオズ(フランス)のアルバム『アドニス』の紹介はほとんど尽きてしまうが、要するにフランスのロック雑誌のライターが作ったアルバムで、そのエルヴェ・ピカールという人は他には作品はないらしい。このアルバムが発売時に日本盤LPも出ていたのは、同じエッグ・レーベルからエルドンの『スタンバイ』(LP時代の邦題は『スタンド・バイ』)も同時発売されていたからで、『スタンド・バイ』を気に入った方はこちらもどうぞ、というアピールだった。オズの『アドニス』だけでは単独発売されただろうか?案外当時はSFブームとテクノ・ロック・ブームがあったから発売されたかもしれない。少なくともそうしたブームがなければ、オズどころかエルドンだって実験的すぎて発売されたかあやしい。
 そう、『スタンバイ』。エルドン七作目で最高傑作になったそのアルバムとオズ『アドニア』はどちらもメンバーの二人が重なっており、エルドンはリシャール・ピナス(ギター、エレクトロニクス)をリーダーにパトリック・ゴーティエ(シンセサイザー)、ディディエ・バタール(ベース)、フランソワ・オジェ(ドラムス、パーカッション)の四人だった。一方オズはエルヴェ・ピカール(ギター、エレクトロニクス)をリーダーにピナスとオジェの三人で、何てことはないエルドンの変名バンドみたいなものなのだ。この78年にはピナスは『スタンバイ』『アドニス』の他にもソロ名義で『クロノライズ』をコブラ・レーベルからリリースしており、コブラ・レーベルはエルドンの第五作『終わりなき夢』1976と第六作『インターフェイス』1977、ピナス名義の『リゾスフィア』1977もリリースしていたインディー・レーベルだから、メジャー傘下のエッグ・レーベルから『スタンバイ』がリリースできたのはピカールの口利きがあり、そのお返しが『アドニス』の全面参加だったのかもしれない。
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 だが『スタンバイ』と『アドニス』を聴き較べてまざまざと感じるのは、リーダーの音楽的イマジネーションに歴然と差があり、ピナスとオジェが全面参加していてもエルドンのアルバムはおろか、ピナスのソロ名義のアルバムにも及ばない、ということだ。ピナスやオジェが手を抜いているとは思わないが、ピカールがエルドンの二人から十分に実力を引き出せなかったのは明らかで、エルドンの二人もピカールのリーダーシップに従うと『アドニス』程度のアルバムしかできなかった、ということになる。
 ピナス=エルドンは、あまり高く評価しない人からは趣味性やアマチュアリズムを指摘されることも多い。実際にミュージシャン=プレイヤーとしてのピナスはピナス自身のコンセプトがあるからこそ実力を発揮できるので、凄腕ドラマーのオジェや気鋭シンセ奏者のゴーティエもピナスのコンセプトでは素晴らしいプレイができた。優れた音楽を作り出す音楽的イマジネーションやリーダーシップを、ピナス=エルドンは備えていたといえる。それはエルヴェ・ピカールのオズには欠けていて、単にピナスとオジェの参加だけではエルドンやピナスの作品には及ばないことだった。
 それでも78年のエルドン組(ピナス&オジェ)全面参加アルバムならスルーはできない。のだが、どういう事情かピナス=エルドン関連の作品でこのアルバムだけがCD化されていなかったりする。ピナス関連では大したアルバムではないのは事実だが、再発に値しないほどひどくはない。何より『スタンバイ』と異父兄弟みたいなアルバムなのだ。それともピカール側かピナス側のどちらか、または両者とも再発したくない理由があるのだろうか。それを思うと、このまま埋もれさせておくには惜しいアルバムという気がしてくる。