人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

食の適量とは?

 
 食事の適量とは摂取カロリーを消費(代謝)カロリーで割って、それが1.0に近いほどよろしい、ということになるくらいは誰でもわかる。栄養バランスについては何の資格もないが、二児を養育した経験と座右の一冊『食品成分分析表』でだいたいの食材の糖質・資質・蛋白質・ヴィタミン・ミネラルの含有量と体重あたりの必須摂取量は覚えてきた。ちなみに『ムーミン谷』『ピーナッツ畑』と続けている偽哲学童話の手法は篠崎光正『演技術』の、いわゆるシノザキ・メソッドを、演劇ではなく散文創作に応用している。シノザキと言えばこの30年以来の演劇人で知らない人はいない(80年代初頭には高校演劇にも浸透していた)演技法で、従来の心理学的演技法ではなくボディ・ランゲージとして演技を組み立てていく手法であり、身体トレーニングが従来よりも重要視される。それを偽童話創作に応用しているというのは真っ赤なウソだが、フリーライター時代は劇評もこなしていたのは事実でございます。
 さて、経歴ついでに言えば資格学歴職歴特記事項なし、前科一犯(県条例違犯)というのが自慢ではないが簡潔な略歴になる。あと離婚歴1回、双極性障害1型(躁鬱病)もか。著作は某映画監督(故人)へのロング・インタヴューが『快楽の帝国』というタイトルで仏訳されてフランスで20年くらい前に出た(著者には無許可)。ええと、食事の適量についての話だった。

 摂取カロリーは算定できても、消費(代謝)カロリーはそう一律には算定できないのではないか、とこれまでの経験からして思える。獄中生活や入院生活はもとより、短期間だがホームレス、離婚前後の5年間に渡る摂食障害(明らかに低栄養状態に陥っていた)、長期に及ぶ療養生活と、生活状態からでも代謝機能が安定して栄養状態の面で理想的なバランスを保てるような環境はごく最近まで実現できなかった。今は非常に質素な食生活で基本的には一汁一菜、朝はお新香を乗せたお茶漬け、昼は麺類(具は欠かさない)、晩は野菜かわかめの味噌汁に焼き魚か肉ソテー、米飯に季節の漬け物あたりが標準的な食事で、面倒な時は夕食は各種レトルトを米飯にかけて済ませたりもするが、わかめの味噌汁くらいはつける。
 あまり一食あたりのおかずの種類は豊富とはいえない。米飯だけは一食一合は食べないと物足りない。なので一日一麺にしているが、カロリーの面や栄養バランスからもそばがいちばん良いだろう。実際夏は毎日そばばかり食べて飽きなかった。しかし冬は鍋焼きうどんやラーメンがうまい。その上冬は屋外運動量も減る。

 食事は人生の楽しみだが、一人暮らしで毎食自炊だといっそ三食エンシュア・リキッドでいいや、という気もしてくる。料理はそれなりに面白いが、食べるのは自分だけだとモチベーションも下がってくる。栄養だけならエンシュア・リキッドで十分なのだ。ダイエットを考えている方にもお勧めする。栄養バランスと一日の摂取必要量も満たし、その上カロリーは通常食の数分の一(これは人によって通常食の目安が違うから)なので、栄養不足を心配せず確実に痩せられる。内科で食欲不振を訴え処方してもらえば健康保険証適用で1缶100円くらい、市販のダイエット用栄養補助食品よりずっと安価で、これだけ飲んでいれば栄養摂取は万全。いわゆる植物人間状態になって昏睡している患者に鼻から注入されている映像はご存知だろうが、あれがエンシュア・リキッドです。特に寿司を食べたいとかラーメン食べたいというのでなく(食べたい時は食べればいいのだし)、単に栄養摂取の必要だけならこうした高機能医療用栄養ドリンク剤でいい。

 だがこうした不純な動機からではすんなり処方してはもらえず、実際には半年ごとに入退院を繰り返していた頃はそのたび絶食状態に陥っていたのだからエンシュア・リキッドで食い止められた衰弱もあったかもしれないが、そればかりはわからない。障害にも受けられる公共サービスが程度によってランクがあり、自炊できる程度の障害であれば訪問看護は受けられてもヘルパーを頼むことはできない。いざ自炊も無理となればショートステイ施設を利用することはできるが、施設の数が少なく予約して待つことになり、施設に入所できる前に病状が進んで結局また入院するはめになりかねない。
 そこで今は一食たりとも欠かさず自炊にいそしみ、習慣というのは良い意味での惰性にもなるから(毎日必ず作文する、楽器を練習するのと同様に)、料理する習慣も惰性にまでなれば格別大したことはない。
 それにしても、実家を出てから6回引っ越ししたが(賃貸5回、分譲1回)、どこのキッチンも身長150cmくらいの利用者向きの高さに作ってあり、上体をかがめねばならず腰が痛くなる。下ごしらえに手間のかかる調理の時は椅子に座ってキッチンに向かっている。そうするとちょうどいい高さになるが、わざわざ立ったり座ったりするのも面倒で、男の一人暮らしの自炊を考えた作りのキッチンというのはリフォームでもしない限りなさそうだ。こんなところにも料理をするのは女、男がキッチンに立つのはレトルトか惣菜の盛りつけ、麺類程度、とする因習が働いているわけなのだ。