わかった、と大ノッポが言いました、つまりぼくたちはアリスが見ている夢なんだ。つまりさ、と大ノッポが言いました、ぼくたちはドジソン先生のつくり話なんだ。だからさ、と大ノッポが言いました、ぼくたちは同じところをぐるぐる回っているんだ。それはさ……
またいきなりようわからんことを言いよる、と中ノッポが遮りました。だいたいその外人さんは何や?ドジソン先生なんて会うたこともあらへんで。いいかげんヨタ飛ばすんでも、もっと真面目にやれー。
ヨタやないで、と大ノッポ。チビはふたりの間でためつすがめつ考えている様子だったのが、ふと思い当たる節があるようでしたが、考えている時には考えているようには見えず、考えていない時には考えていないのがチビのキャラクターですから、いわば卓球をしている大ノッポと中ノッポの間に張られたネットみたいなものです。卓球というのはね、インドではなくて中国のスポーツですよ。ついでに言えばインドの国技はカバディといって、競技中に攻撃者はカバディ、カバディ、カバディと連呼し続けなければならないというルールがあるのです。インド帰りのお友だちに会ったら訊いてみてごらんなさい。
変なの、とアリスは言いました。カバディカバディカバディ、とエディス。止めなさい、とロリーナはたまにはお姉さんの威厳を効かせようとしましたが、ドジソン先生は笑うと、サンスクリットにも良い言葉がありますよ、ダッター、ダーヤズワム、ダーミヤータ(捧げよ、同情せよ、自制せよ)。
シャンティ、とチビが言いました、シャンティ、シャンティ。
その意味は知っとるわ、と中ノッポ、平安あれって言うんやろ、決まり文句や。でもどうして3回言うんや?
夢の途中だったんだろ、と大ノッポ、きっとぼくたちが何度も見てきたアリスの出てくる夢さ。いつもぼくたちが追いつめられた時、そこにはアリスがいた。もしそれがいつも同じアリスなら、今度のもそうだ。
待ってくれ、と中ノッポが言いました、ぼくらがアリスの見る夢の中におるんなら、何でぼくらがアリスの夢を見るんや?
現在形じゃないよ、と大ノッポ、たぶんこれはもう終わったことなんだ。もし現在形なら話は進んでいいはずなのに、同じところを回っているんだから。
答えになっておらへん、と中ノッポ、ぼくが知りたいんは、どっちがどっちの夢を見とるんかや。つまり……
終わった方さ、と大ノッポは言いました。