人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ライヴ・ヤードバーズ・フィーチャリング・ジミー・ペイジ Live Yardbirds Featuring Jimmy Page (Epic, 1971)

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ライヴ・ヤードバーズ・フィーチャリング・ジミー・ペイジ Live Yardbirds Featuring Jimmy Page (Epic, 1971) Full Album : https://youtu.be/qUFvB1gAgVU
Recorded Live at Anderson Theatre, New York City, March 30, 1968
Released by Epic Records E30615, August 25, 1971
Reissued by Columbia Records Columbia Special Products ‎- P 13311, 1976
(Side one)
A1. The Train Kept A-Rollin' (Tiny Bradshaw, Lois Mann, and Howard Kay) - 3:10
A2. You're a Better Man Than I (Mike Hugg, Brian Hugg) - 6:50
*including none listed "Heart Full of Soul" (Graham Gouldman)
A3. I'm Confused (none listed) - 6:47
*none listed but based by Jake Holmes' "Dazed and Confused"
A4. My Baby (Mort Shuman, Jerry Ragavoy) - 5:01
(Side two)
B1. Over Under Sideways Down (Chris Dreja,Keith Relf, Paul Samwell-Smith, Jim McCarty, Jeff Beck) - 2:39
B2. Drinking Muddy Water (Relf, Jimmy Page, McCarty, Dreja) - 3:16
B3. Shapes of Things (Samwell-Smith, Relf, McCarty) - 2:48
B4. White Summer (Page) - 4:19
B5. I'm a Man (Ellas McDaniel a.k.a. Bo Diddley) - 11:59
[ The Yardbirds ]
Keith Relf - harmonica, lead vocals
Jimmy Page - guitar
Chris Dreja - bass guitar
Jim McCarty - drums, backing vocals

 ついにヤードバーズジミー・ペイジに乗っ取られレッド・ツェッペリンのプロトタイプと化したバンド解散間際のライヴ録音がこれです。日本語版ウィキペディアにもアルバム解説があるので概略は引用で済ませましょう。

「LIVE YARDBIRDS FEATURING JIMMY PAGE(1971年、1976年)
1968年5月、ニューヨークで行われた解散間際のライブ音源。ペイジの意向で発売後10日間程で回収されたいわく付きのアルバム。ペイジの発言によると、ライブ当日のエンジニアは「エレクトロニクスを使えば何でもできる」と言い、ドラムセットの上にマイクを吊るなど目茶苦茶なセッティングを施されたという。そのため、バスドラムの音が聞き取りにくくなってしまっている。更には演出のため、闘牛場の歓声を故意にミックスされている。本作は、ブートレグが多く出回った。ブートレグであるにも拘らず、元メンバーのインタビューがライナーに掲載されたこともあるという。また1976年には、コロムビア・レコードから本作の会員向け限定盤が配布されている。」
(日本語版ウィキペディアより)

 本作は本来発表の意図のない(プロモーション用にラジオ放送用に録音されたとも考えられる)ライヴ録音ですが、本作の発掘リリースされた1971年8月にはレッド・ツェッペリンは前年10月発売の『レッド・ツェッペリンIII』前後のツアーを終え、11月発売予定の新作『レッド・ツェッペリンIV』が控えていた時期で、『IV』収録予定曲はすでにライヴで披露され、いよいよストーンズザ・フーピンク・フロイドと並ぶレコード・セールスとライヴ観客動員数を誇るバンドになっていました。そこでツェッペリン人気に便乗した本作が発掘リリースされたわけです。すぐにペイジが訴訟に乗り出し回収で示談になりましたが、10日ほどとはいえ市場に出回ったので本作はレコード盤からの複製盤のかたちで海賊盤の定番になりました。このリンク先の音源も海賊盤によるものと思われますが、ひどい音質はどの業者による海賊盤でも変わらないのでエピック=コロンビア・レコーズ自体がミックス前のオリジナル・マスターからリミックス・リマスター盤の製作をやり直さないと駄目でしょう。元来バンド未公認リリースだったアルバムですが、案外今聴くと解散間際までヤードバーズよくがんばったじゃないか、と楽しめる内容なのはさすがです。A2の「You're a Better Man Than I」~「Heart Full of Soul」のメドレーがなぜか1曲しかクレジットされていなかったり、「Dazed and Confused」がA3では作者不詳の「I'm Confused」にされていたりとどさくさ紛れのリリースだったのが諸々の海賊盤では訂正されていたりするのがかえって可笑しく感じます。ヤードバーズといえば「Train Kept A Rollin'」、そして「Dazed and Confused」といえばツェッペリンのデビュー作のハイライト・ナンバーですが、ちょうど本作直前の3月にフランスのテレビ出演時のスタジオ・ライヴでほとんどヤードバーズの現役最後の映像が観られます。意外なほど演奏はしっかりしておりクラプトン、ベック、ペイジの歴代ギタリストが参加していたバンドだったのは伊達ではなかったわけです。しかしこの時期ペイジだけがすでにステージ・アクションまでツェッペリン化しているのには苦笑します。
Yardbirds - Train Kept A Rollin' (French TV Show, March 9, 1968) : https://youtu.be/0y078n95ApA
Yardbirds - Dazed and Confused (French TV Show, March 9, 1968) : https://youtu.be/3ffBRhtWjEQ

(Original Epic Records "Live Yardbirds Featuring Jimmy Page" LP Liner Cover & Side 1 Label)

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 一度は回収廃棄処分にもなったのにエピック・レコーズの親会社コロンビア・レコーズが会員限定販売用に本作を1976年に再発売したのはよく無事で済んだなとも言えますが、ツェッペリンは1975年2月の『Physical Graffiti』からバンド自身のレーベル、スワン・ソングに原盤権を移しており、1976年3月の新作『Presence』が出たばかりでした。レッド・ツェッペリンはメンバーは全員イギリス人ですがアメリカのアトランティック・レコーズからデビューしたバンドで、配給はコロンビアと並ぶ大手のワーナー・ブラザースでした。アトランティックはワーナー傘下のポピュラー音楽レーベルでも古株かつ実績が大きく、1971年の『Live Yardbirds Featuring Jimmy Page』回収にはツェッペリンを最新主力商品とするアトランティックとワーナーの後ろ盾もあったでしょう。1976年にはレッド・ツェッペリンは依然として英米ロック界の頂点にいましたが、配給こそワーナーとの関係を保っていたとはいえ原盤権をバンドのスワン・ソング・レーベルに移したことで必ずしもワーナーの主力商品ではなくなっており、今度はエピックの親会社コロンビアがどさくさ紛れに『Live Yardbirds Featuring Jimmy Page』を再発売しても会員限定販売という規模では問題にならなかったのだと思われます。つまり発売即配給完了・完売ならば回収の余地はなく、おそらく権利関係の根回しがされた上の限定再発売だったのでしょう。
 選曲でもすでにツェッペリンのデビュー作でのアレンジがほぼ完成した「Dazed and Confused」が演奏されている(ヴァイオリンの弓弾き奏法までやっている)他、アルバム『Little Games』で披露したオリジナル・インスト曲でツェッペリンのデビュー作の「Black Mountain Side」の変奏曲とも言える「White Summer」があり、またA1, A2(2曲をメドレー), B1, B3などジェフ・ベック時代のヒット曲のペイジ版が聴けるのも面白く、ベックよりさらに攻撃的で荒々しい演奏が楽しめます。B5はクラプトン版、ベック版とくり返し再演されており、ペイジ版は最長の長さになっています。ヤードバーズアメリカ巡業からイギリスに帰国後、1968年7月にレルフとマッカーティーが新バンド(ルネッサンス)結成のために脱退、8月にはドレヤも脱退して残ったペイジが新メンバー3人を迎えて10月までニュー・ヤードバーズ名義でスケジュールを消化します。11月にはバンドはレッド・ツェッペリンと改名し再デビューしますが当初ツェッペリンは持ち曲に乏しく「White Summer / Black Mountain Side」、デビュー作A面最終曲になった「Dazed and Confused」の他にもペイジ在籍時ヤードバーズのライヴ版「Smokestack Lightning~Beck's Bolero~I'm Waiting for the Man(なんと!)」のメドレーはツェッペリンのデビュー作のB5「How Many More Times」そのものです。ブートの古典的名作『Last Rave-Up in L.A.』はヤードバーズの最後のコンサートになった2夜連続のライヴ盤ですが、『Live Yardbirds Featuring Jimmy Page』よりも演奏内容で優れるのはこちらの方かもしれません。音質だってエピック=コロンビア盤と大差はないのです。レルフがルネッサンスの後に'70年代型ハード・ロック・バンド、アルマゲドンに向かった原点もこの時期のヤードバーズがあったからこそと納得がいきます。

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The Yardbirds - Last Rave-Up in L.A. / Last Live at Shrine Auditorium, Los Angeles, May 31 & June 1, 1968 (Glimpses Records, 1979) Full Concert (May 31) & Incomplete Recording (June 1) : https://youtu.be/5Vl6SZ8ln3M

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Audience Recorded by David Cole at Shrine Exposition Hall, Los Angeles, CA; May 31, 1968 and June 1, 1968. L.A. Show billing with B.B. King and Sons of Chamblin.
First Released by Glimpses Records GR001, 3LP Box-Set, 1979
[ Los Angeles - First night; May 31, 1968 ]
00:00 The Train Kept a-Rollin - 3:24
03:23 You're a Better Man Than I - 5:11
08:34 Heart Full of Soul - 2:39
11:13 Dazed and Confused - 8:23
19:36 Shapes of Things - 2:56
22:32 I'm a Man - 13:39
36:10 White Summer - 6:44
42:55 Smokestack Lightning to Beck's Bolero - 7:29
50:24 I'm Waiting for the Man - 4:42
55:05 Bye Bye Bird - 5:59
1:01:04 Happenings Ten Years Time Ago - 3:24
1:04:28 Drinking Muddy Water - 4:05
1:08:33 NYC Blues - 2:39 (aborted)
1:11:13 I Wish You Would - 7:24
[ Los Angeles - Second night; June 1, 1968 ]
1:18:37 introduction - 0:54
1:19:31 The Train Kept a-Rollin' - 3:23
1:22:54 You're a Better Man Than I - 5:42
1:28:36 Heart Full of Soul - 2:31
1:31:07 Happenings Ten Years Time Ago - 3:31
1:34:18 I Wish You Would/Hey Gyp - 13:11
1:47:30 Drinking Muddy Water - 3:42
1:51:11 NYC Blues (Become My Friend) - 5:34
1:56:44 I Ain't Done Wrong - 7:13
2:03:57 Over Under Sideways Down - 1:58
[ The Yardbirds ]
Chris Dreja, Keith Relf, Jim McCarty, Jimmy Page.

(San Remo; January 27, 1966)
2:05:53 Paff Bum - 2:59 (radio signal issues at the beginning)
2:08:51 Questa Volta - 2:40
(San Remo; January 28, 1966)
2:11:31 Questa Volta - 2:41 (with extended lyrics)
2:14:12 Paff Bum - 2:48
[ The Yardbirds ]
Jeff Beck, Jimmy Page, Chris Dreja, Keith Relf and Jim McCarty.