人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

スタン・ゲッツ Stan Getz Quintet - 身も心も Body And Soul (Clef, 1952)

イメージ 1

スタン・ゲッツクインテット Stan Getz Quintet - 身も心も Body And Soul (Johnny Green with Ed Heyman, Robert Sauer & Frank Eyton) (from the album "Stan Getz Plays", Clef Records ‎MGC-137, 1953) : https://youtu.be/C2QwjXQMIZE - 3:14
Recorded in New York City, December 12, 1952
[ Personnel ]
Stan Getz (ts), Duke Jordan (p), Jimmy Raney (el-g), Bill Crow (b), Frank Isola (ds)

 ジャズのテナーサックスの巨匠を上げるとコールマン・ホーキンスレスター・ヤングソニー・ロリンズジョン・コルトレーンと並んで必ず上がるのがスタン・ゲッツで、並みいる黒人奏者を置いても白人ではゲッツだけは落とせない人になります。ゲッツは義務教育卒業後すぐビッグバンドに就職した叩き上げのプロで、レスター・ヤングがいなければゲッツは出てこなかったかもしれませんがビ・バップがなくてもレスターの影響だけで個性を確立できたのではないかと思える強力なジャズマンでした。また前記の4人は大きな影響力がありましたが、ゲッツから影響を受けたジャズマンはほとんどいない点でもポピュラーなのに特異、特異なのにポピュラーな怪物的存在でした。それはゲッツよりもより大きく、フランク・シナトラについても言えることでしょう。

イメージ 2

Frank Sinatra - Body and Soul (from the album "Frankly Sentimental", Columbia Records C-185, 1949) : https://youtu.be/FDb2AJpmVLI - 3:22
Recorded in New York City, November 9, 1947
[ Personnel ]
Frank Sinatra (vo), Alex Stordahl (arr.) with Frank Sinatra's Orchestra

 ビ・バップによるモダン化に先んじてサックスの可能性は拡大されていた、しかしアート・テイタムナット・キング・コールほど優れたピアニストでも「Body and Soul」ではギタリストにメロディーを弾かせていました。打鍵楽器であるピアノにはなめらかに歌うメロディーが不向きだからですが、テイタムに影響を受けビ・バップの渦中でジャズ・ピアニストになったバド・パウエルは大胆な打楽器的奏法と猛烈に細分化されたリズム感でモダン・ジャズ・ピアノの開祖というべき人になりました。楽器別で影響力を較べれば、レスターやチャーリー・パーカーが後続のサックス奏者に与えた影響よりも後続のジャズ・ピアニストへのパウエルの支配力の方が勝るかもしれません。

イメージ 3

Bud Powell Trio - Body and Soul (from the album "Piano Solos", Mercury ‎Records MG C-507, 1951) : https://youtu.be/hANL9y7Yh-c - 3:20
Recorded in New York City, February
[ Personnel ]
Bud Powell (p), Curley Russell (b), Max Roach (ds)

 西海岸で数少ないビ・バップ支持者のジャズマンであり、ディジー・ガレスピーやパーカー、マイルス・デイヴィスバド・パウエルマックス・ローチらと親交を持ち共演を重ねながら、作曲・編曲家でもあるベーシスト、チャールズ・ミンガスにはビ・バップの主流とはかなり外れる実験的指向がありました。ミンガスはニューヨークに拠点を移してからはレニー・トリスターノとデュオでクラブ出演することが多かったと伝記にありますが、音楽性は異なりこそすれ実験性ではトリスターノのクール・ジャズとの親近性を感じさせます。

イメージ 4

Charles Mingus - Body and Soul (from the album "Strings And Keys", Debut Records DLP1, 1953) : https://youtu.be/Z58mrOHKhO4 - 3:36
Recorded in Los Angeles, California, April 1951
[ Personnel ]
Charles Mingus (b), Spaulding Givens (p)

 ビ・バップの最盛期からポスト・バップを考えていたバリトンサックス奏者のジェリー・マリガンはニューヨーク出身ながらいち早くロサンゼルスに拠点を移しましたが、クール・ジャズの影響を受けながらもクール・ジャズの源泉であるビ・バップ要素は皆無で、またクール・ジャズの実験性をやわらげクリーンな親しみやすさから人気を博した西海岸出身のデイヴ・ブルーベック・カルテットのアルトサックス奏者、ポール・デスモントはもっとも白人ジャズらしい良さを発揮したジャズマンでした。マリガンはピアノレスの小編成バンドを得意とし、デスモンドはブルーベック・カルテット以外ではブルーベック以外のピアニストとは決して共演しなかったので(自分名義のアルバムでは金管楽器入りのピアノレス・カルテットか、ピアノではなくギターにジム・ホールを迎えるのが常で、唯一例外はMJQとの共演でした)、マリガンとデスモンドの共演はごく自然な組み合わせでした。ホーキンスやレスターら黒人奏者とは違い、また白人奏者でもゲッツとの共通点はほとんどない演奏です。意外性のある共演ではない分、幾分優等生の模範解答の観はありますが、マリガンとデスモンドに一流の演奏をするなと言っても無理ではありませんか。

イメージ 5

Gerry Mulligan & Paul Desmond Quartet - Body and Soul (from the album "Gerry Mulligan - Paul Desmond Quartet", Verve Records MGV-8246, 1958) : https://youtu.be/4fzBrTgClmI - 9:43
Recorded in New York City, August 27, 1957
[ Personnel ]
Paul Desmond (as), Gerry Mulligan (bs), Joe Benjamin (b), Dave Bailey (ds)