人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Strange Celestial Road (Rounder, 1982)

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Sun Ra and his Arkestra - Strange Celestial Road (Rounder, 1982) Full Album : https://youtu.be/cW9Eu_VwecU
Recorded at Variety Recording Studio, New York, 1979.
Released by Rounder Records Rounder 3035, 1982 also Y 19 (1982), Virgin 201919 (1982)
All Compositions by Sun Ra
(Side A)
A1. Celestial Road (Sun Ra) - 7:02
A2. Say (Sun Ra) - 12:05
(Side B)
B1. I'll Wait For You (Sun Ra) - 16:00
[ Sun Ra and his Arkestra ]
Sun Ra - electric piano, organ, synthesizer
Michael Ray, Curt Pulliam, Walter Miller - trumpet
Craig Harris, Tony Bethel - trombone
Vincent Chancey - French horn
Marshall Allen - alto saxophone, flute
John Gilmore - tenor saxophone, percussion
James Jacson - flute, bassoon, percussion
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
Kenny Williams - tenor saxophone, baritone saxophone, flute
Noel Scott - alto saxophone, baritone saxophone
Hutch Jones - alto saxophone, tenor saxophone
Sylvester Baton - reeds
Skeeter McFarland, Taylor Richardson - electric guitar
Steve Clark - electric bass
Richard Williams - bass
Harry Wilson, Damon Choice - vibraphone
Luqman Ali, Reg McDonald - drums
Atakatune - percussion
June Tyson, Rhoda Blount - vocals

 本作は以前全曲のご紹介ができずA面2曲のうち冒頭のアルバム・タイトル曲とB面全面を占める「I'll Wait For You」をご紹介しただけでしたが新たに全曲をご紹介できることになりました。もっともB面の「I'll Wait For You」だけでも本作は堪能できるもので、同曲は演奏のたびに「We'll Wait For You」と改題、歌詞も「I'll~」を「We'll~」と変えて歌われるバンド・テーマとして70年代初頭からライヴの定番曲だったもので、アーケストラのレパートリーでは「Space Is the Place」に次ぐものですが「Space Is~」ほどの人気曲ではなく、これほど長尺なスタジオ・ヴァージョンでリメイクされたのは初めてのことです。同曲の後半の思い切って原曲離れした長い長いインプロヴィゼーションの応酬は本作のハイライトと言えるでしょう。アルバム全体としては同時録音と推定される前作『Sleeping Beauty』と微妙に異なる味わいを持った姉妹作であり、この2作はアーケストラのフュージョンへの挑戦作『Lanquidity』('78年7月録音)でのややムラのあった試みがよくこなれて、アーケストラ本来の持ち味とうまく融合したものになっています。
 前作『Sleeping Beauty』の瞑想的なエキゾチシズムを秘めた穏やかなサウンドと較べると本作はなだらかな楽想の下で不穏なマグマがたぎるようなファンク色があり、どちらもサン・ラ・アーケストラには当初からあり60年代前半には完成していた特色でした。この2作は作風を分けて異なるカラーのアルバムに仕上げたのが成功しており、特に本作のシンセサイザー使用は'69年~'70年録音の『My Brother the Wind』から'78年の『Disco 3000』に至る実験からさらに一歩を進めたもので、もっぱら変則的な小編成で成果を上げてきたシンセサイザーが大編成アーケストラでうまく生かされたのはライヴ作を除けばこれが初めてかもしれません。アルバムの性格を分けた分『Sleeping Beauty』と本作はやや小ぶりなスケールの印象を受けますが、その分サン・ラ作品でも聴きやすいアルバムになっており、アメリカ本国ではブルースとカントリー・フォークのレーベルのラウンダー、イギリスではプログレッシヴ・ロックのヴァージン・レーベルとポストパンク・レーベルのYレーベルから同時発売された作品でもあります。確かにこのアルバムは主流ジャズのリスナーよりもオルタネイト・ロックのリスナーにこそ受け入れられるムードがあり、また70年代後期からヨーロッパ諸国のジャズ・フェスティヴァルで度々同じステージを踏んだはずのフェラ・クティからの逆影響もあるように思えます。