Sun Ra and His Arkestra - Lanquidity (Philly Jazz, 1978) Full Album : https://youtu.be/rMdf9AL_6Bw
Recorded at Blank Tapes Studio, New York, July 17 1978
Released by Philly Jazz Records PJ 666, 1978
all compositions by Sun Ra
(Side A)
A1. Lanquidity (Sun Ra) - 8:22
A2. Where Pathways Meet (Sun Ra) - 6:33
A3. That's How I Feel (Sun Ra) - 8:06
(Side B)
B1. Twin Stars of Thence (Sun Ra) - 9:33
B2. There are other Worlds (They have not Told You of) (Sun Ra) - 10:58
[ Sun Ra and His Arkestra ]
Sun Ra - ARP, Fender Rhodes, Yamaha organ, Hammond B3 organ, Mini-Moog, piano, orchestral bells, Crumar Mainman organ, vocal
Eddie Gale - trumpet
Michael Ray - trumpet, fluegelhorn
Marshall Allen - alto saxophone, oboe, flute
Danny Davis - alto saxophone, flute
John Gilmore - tenor saxophone
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
Julian Pressley - baritone saxophone
James Jacson - basoon, flute, oboe, ethnic voice
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
Dale Williams - electric guitar
Disco Kid - electric guitar
Richard Williams - bass, electric bass
Luqman Ali (Edward Skinner) - drums, percussion
Atakatune - conga, tympani
Michael Anderson - percussion
June Tyson - ethnic voice
Edde Tahmahs (Eddie Thomas) - ethnic voice.
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(Original Philly Jazz "Lanquidity" LP Liner Cover & Side A Label)
ディッカーソンとのデュエット作直後、サン・ラが久しぶりに大編成アーケストラで録音した『Lanquidity』は新興レーベルのPhilly Jazzからリリースされました。同社はサターン・レーベルがシカゴとフィラデルフィアからフィラデルフィアに一本化された後、レコード制作(手作りジャケットやレーベル印刷)や流通販売を手伝っていたアーケストラのファン有志が立ち上げたレーベルです。このアルバムは1976年パリ録音のスタジオ盤『Cosmos』からの直接的な次回作を思わせるメジャーな質感のアルバムで、フィリー・ジャズ社はよっぽどサン・ラのために資金繰りをがんばったかインディー・レーベル作品とは思えない録音クォリティのアルバムになりました。全部の楽器がクリアに分離して聴こえるアーケストラのアルバムはそう多くはないのです。ギタリストが入った(しかも二人いてソロも取る)アーケストラの本格的なスタジオ・アルバムという点でも初めての試みで、アーケストラ初のフュージョン・アルバムという評も誇張とは言えません。『Cosmos』もクロスオーヴァー・アルバムと言えるサウンドでしたが、アーケストラの伝統的ホーン・アンサンブルがまだ前面に出ていました。本作でもアーケストラのホーン陣は健在ですが、重層的に迫ってくるというより彩りを添えるような役割に変わっています。
いつものサン・ラより都会的なサウンドに聴こえるのはオルガンよりもフェンダー・ローズ(エレクトリック・ピアノ)の使用が中心で、フル編成のアーケストラ作品ですがフェンダー・ローズ、ベース、ドラムスのトリオを核に、メロディーよりも和声感の持続を聴かせるようなアンサンブルになっています。ホーン陣のソロもありますがハーモニーの中で漂うような、音色とサウンド・バランスの変化のために挿入されているソロで、まだしも数曲で聴かれるギター・ソロの方がソロらしい扱いを受けています。交響詩的というのとも違いますが、ピアノ・トリオを要所要所でホーン・セクションがふわりと包む感じで進むアルバムです。こうした手法のフュージョンはピアニスト(キーボード奏者)がリーダーのアルバムに確かに類例があり、サン・ラがそれらを参照したかはわかりませし聴いていないはずはありませんが、フュージョンの類型に追従したのではないでしょう。聴きようによってはフュージョンより先も先、50年代後半にもこうした手法をとったアーケストラの楽曲はあるのです。ただしもし『Lanquidity』の方向にサン・ラが進むのであれば、これはまだアンサンブル全体のコンセプトに整理する余地を感じさせ、それがアーケストラのアイディンティティでもあったホーン・セクションにあるだけ課題は厄介です。本作のプレイについて言えばサン・ラの指示通りにこなせるならばホーンはセッション・ミュージシャンでも済んでしまいます。本作は思い切った試みを成功させてはいますが、次作の予想がつかないアルバムとも言えるでしょう。