Recorded at Berliner Weltklang Studio, March /June 1975, Berlin
Released by Brain Records / Metronome Records GmbH, brain 1075, August 1975
Produced and All tracks composed by Klaus Schulze.
Cover by Urs Amman
(Side 1)
A1. Bayreuth Return - 30:32
(Side 2)
B1. Wahnfried 1883 - 28:38
[ Personnel ]
Klaus Schulze - ARP 2600, ARP Odyssey, EMS Synthi-A, Elka String Synthesizer, Farfisa Professional Duo Organ and Piano, Synthanorma Sequencer
*
(Original Brain "Timewind" LP Liner/Gatefold Inner Cover & Side 1 Label)
シュルツェの前2作『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』は初期2作『イルリヒト』『サイボーグ』のドローン手法から一転してパーカッシヴなリズム・チューンとアンビエンス曲の2種に大別され、塊状のサウンド作りだった初期2作から使用楽器をすっきりと分離させた整理されたサウンドに変化しましたが、本作『タイムウィンド』はDマイナーのトライアドによるドローン手法という初期2作に戻ったようでいて、音色は分離が良く音数はぐっと減って前2作の成果を生かしたサウンドのアルバムになっています。もっとも大きな特徴は本作が初めてシュルツェのアルバムではシークエンサーを導入したことにあり、フレーズの反復用に使用するというよりもシークエンサーによる細分化されたパターンの反復をリズム楽器として使用していることで、その特徴は「バイエルンに帰る」と題されたA面曲に顕著ですが、リヒャルト・ワーグナーに捧げられた本作はシークエンサーにストリングス・シンセサイザーをインプロヴァイズして展開していくA面と、定倍数に限らず赴くままにリズムレスとも言えるコード・チェンジをくり返すストリングス・シンセサイザーをベーシック・トラックにファルファッサ・オルガンを主に使用してインプロヴァイズされたB面「ヴァーンフリート1883」と、ともにワーグナーにちなんだ曲名(バイエルンはワーグナーの故郷で葬送曲を暗示し、ヴァーンフリート荘とはワーグナーの別荘の名称です)がつけられたAB面の両曲は、エンディング近くになって著しくアンサンブル楽器の数が増加し爆発音に向かって進みます。次作『ムーンドーン (Moondawn)』'76、続く映画のサウンドトラック・アルバムながらシュルツェ自身もレギュラー・アルバムとして数える『ボディ・ラヴ (Body Love)』'76では専任ドラマーにヴァレンシュタインのドラマー、ハラルド・グロスコフを迎えてシークエンサーによるリズムと生演奏のドラムスを重ねたダイナミックなサウンドに進み、シュルツェ自らロック・ミュージック宣言をするアルバムになります。『タイムウィンド』なしにシークエンサーの初導入の試みと本作独自の達成は見られなかったのですが、ロック色の点では『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』から『ムーンドーン』『ボディ・ラヴ』と本作を抜きにもシュルツェのサウンドの発展過程はたどれるので、本作はシュルツェの真髄とも言える一方、前後作からはやや方向の異なる、一連のアルバムとは併走してシュルツェが温めていたコンセプトによる作品のようにも思えます。