人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ザ・ドーム・イヴェント The Dome Event (Virgin, 1993)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ザ・ドーム・イヴェント The Dome Event (Virgin, 1993)
Track 1: Digital recording of "The Dome Event" at Klaus Schulze Cologne Cathedral concert on the evening of 11th. May 1991.
Additional track "After Eleven" was recorded 1992 at Moldau Musikstudio.
Released by Virgin Records Venture CDVE918, March 1993
Produced and Composed by Klaus Schulze
(Tracklist)
1. The Dome Event (Op. 119, D-Minor) - 63:31
A) Andante:
>>1-1. Nachtmusik. Schattenhaft. - 6:50
B) Allegro:
>>1-2. Energisch. In Gemessenem Schritt. - 9:30
>>1-3. Sehr Behaglich. Keck Im Ausdruck. - 3:25
>>1-4. Unbeschwert. - 7:43
>>1-5. Ohne Hast. - 5:06
>>1-6. Scherzo: Un Poco Loco. - 3:19
>>1-7. The Event: Rhythmisch Uppig, Dann Vergnugt, Bewegt. - 12:49
C) Presto:
>>1-8. Ubermutig, Sturmisch Bewegt, Heftig. - 8:16
>>1-9. Un Poco Loco (Reprise). - 1:25
>>1-10. Crescendo. - 3:05
>>1-11. Finale: Tutti Synthi. - 3:05
2. After Eleven - 10:44
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics

(Original Virgin "The Dome Event" CD Liner Cover, CD Label & Inner Information Sheet)

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 クラウス・シュルツェ26作目のアルバムにしてついに「権利者の意向により」試聴リンクの引けないアルバムが出てきてしまいました(つまりこれまでのアルバムの試聴リンクはシュルツェにより黙認されているということです)。しかし本作が『The Dresden Performance』'90に始まり『Royal Festival Hall Vol. 1』'92、『Royal Festival Hall Vol. 2』'92に続く'90年代初頭の大作ライヴ・シリーズの最終作であり、次にリリースされるのがCD10枚組の膨大な未発表ライヴ/スタジオ音源集第1弾『Silver Edition』'93なのを考えると、シュルツェが本作をもってキャリアの節目としたのが推察されるので、これをご紹介せずに済ませるわけにはいかないでしょう。ライヴ録音はケルンのカテドラル・ホールで行われ、ここは「The Dome」と呼ばれる1万人を収容する大聖堂で満員のコンサートだったそうです。
 ライヴ作の成果が実ってか、本作のリリースはシュルツェをクラシック音楽の系譜を継ぐ現代音楽家としても認知させることになりました。意図的な構成と後付けの両方が入り混じっているとは思われますが、『Royal Festival Hall Vol. 1』からシュルツェは楽章形式を取り入れるようになったので、それまでの即興演奏ふうの見かけから作曲と構成を備えた音楽として評価する見方がようやくされるようになったのでしょう。またライヴ演奏で即興演奏により作曲されていてもアルバム化に当たっては入念な編集がされており、本作でも中近東ふうの詠唱や日本的パーカッション等がさまざまなサンプリング音響とともにリズム・フィギュアが入れ替わるごとに現れては消えてゆく、という『The Dresden Performance』以来の手法を集大成した楽曲になっています。10分ほどのスタジオ録音の曲でアルバムを締めくくるのも『The Dresden~』からのライヴ連作の構成を踏襲しており、これまででもっとも呪術的ヴォイス・サンプリングの使用が多い本作ではスタジオ録音曲との対照が効果を上げています。この音楽が1万人の大聴衆を集めたというのも、教会コンサートだったというのも日本の感覚ではちょっと驚異的ですが、『Irrlicht』や『Cyborg』から20年、ドイツのリスナーもシュルツェとともに歩み続けてきたということでしょう。