人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

エルモ・ホープ Elmo Hope - マラケシュにかかる星 Stars Over Marakesh (Celebrity, 1962)

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エルモ・ホープ Elmo Hope - マラケシュにかかる星 Stars Over Marakesh (Elmo Hope) (Celebrity, 1962) : https://youtu.be/-Q2amsyJVTk - 6:45
Recorded in New York, 1961
Released by Celebrity Records as the album "Here's Hope !", Celebrity 209, 1962
[ Personnel ]
Elmo Hope - piano, Paul Chambers - bass, Philly Joe Jones - drums

 心にしみるジャズ・ピアノを求めてエルモ・ホープ(1923-1967)に行きついたという人はレニー・トリスターノ(1919-1978)に行きついたという人と同じくらいジャズの勘所にたどりつけたので、ジャズ・ピアノの表街道にいる大物や人気ピアニストに対してトリスターノやホープは期待の新人としてごくデビュー初期にだけ注目されながらどんどん日陰の存在になって行き、ほとんど表立った活動がなくなって沒後ほそぼそとした録音が陽の目を見ても、それで人気や評価が高まったかと言えばやはり偶然知って好きになる人もあまりいない、けれどごく少数のリスナーには愛され続けていて不人気ピアニストのまま必ず一定数のファンがいるという不思議なジャズマンです。トリスターノやホープがどういう活動をしていたジャズマンかは以前にもこのブログに書いたことがありますが、トリスターノは演奏があまりに難解で地味だったためクラブ出演の依頼がなくなりレコード録音と自宅スタジオでの音楽教師の仕事しかなくなり、ホープは仲間がみんな出世する中ホープだけはいつまで経っても売れず、顔だけは広かったのを目をつけられてマフィアの売人になり、ニューヨークの音楽業界を追放されて知人を頼ってロサンゼルスに渡るもやはり仕事は乏しく、ニューヨークに帰って活動再開まもなく前科から収監され、釈放後の晩年に自作曲の集大成的録音を行うものの沒後ようやく買い手がついた、と売れないジャズマンの生涯を絵に描いたような人でした。
 ホープの友人たちだったジャズマンたちは皆口を揃えて「作曲はいいけど、ピアノの腕前がなあ」と回想しており、特にホープと同世代には達者なピアニストがわんさかいましたからホープのピアノの不器用さは世渡りには決定的に不利でした。それはルー・ドナルドソンソニー・ロリンズジャッキー・マクリーンらホーン奏者のバックバンドに起用された時には気の毒なくらい目立って、リーダーになるほど人気もない、サイドマンとしても不器用となっては少ないレコード録音の仕事しかありません。ホープがロサンゼルスでも行き詰まってニューヨークに戻ってすぐ奇特なジャズ・マニアのジョー・デイヴィスという人物がホープに12曲のホープのオリジナル曲をピアノ、ベース、ドラムスのトリオで録音させ、デイヴィスはその録音を6曲ずつ『High Hope !』'61(Beacon)、『Here's Hope !』'62(Celebrity)として別々のレコード会社名で発売しました。各々300枚以下のプレス枚数だったと推定されホープひさびさの復帰作でありベースとドラムスにホープの親友でマイルス・デイヴィスクインテットのメンバーのポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズを迎えながら話題にもならずまったく売れなかったようです。この12曲の大半はホープが期待の新人だったブルー・ノート・レコーズからのホープ名義のデビュー作で最初に披露されたものでした。そして1962年には、余命5年のホープは獄中にあったばかりか完全に時代遅れのジャズマンになっていたのです。

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Elmo Hope Trio - Stars Over Marakesh (Blue Note, 1953) : https://youtu.be/kbsTSM9G9XE - 3:06
Recorded at Van Gelder Studion in Hackensack, New Jersey, June 18, 1953
Released by Blue Note Records as the 10-inch album "Elmo Hope Trio - New Faces-New Sounds", BLP5029, 1953
[ Personnel ]
Elmo Hope - piano, Percy Heath - bass, Philly Joe Jones - drums