フォーカス・アット・ザ・レインボー (Imperial, 1973)
フォーカス Focus - レインボー・シアター、ロンドン1973年5月5日 Rainbow Theatre, London / May 5, 1973 (Movie) : https://youtu.be/caU4Al3nX8Y
Recorded live at Rainbow Theatre,London, England, May 5, 1973
1. Focus II
2. Hocus Pocus
3. Focus III
4. Answers? Questions! Questions? Answers!
5. Eruption
6. Sylvia
7. Hocos Pocus (reprise)
8. "Profile" feat. Thijs Flute Solo
9. House of the King
10. Jan Akkerman Lute Solo
[ Focus ]
Thijs Von Leer - Vocals,Organ,Flute
Jan Akkerman - Guitar
Burt Ruiter - Bass
Pierre Van Der Linden - Drums
あの『フォーカス・アット・ザ・レインボー』に映像が残されていました。しかもアルバム未収録の3曲も入っています(8~10)。映像はテロップからして英語圏以外の欧米国の制作のようですが、アルバムは全世界発売されてネーデルランド諸国や英米、日本でもヒットしました。フォーカスはオランダのバンドですが、ポップス系以外の本格的ロック・バンドで英米日でも商業的成功をおさめたヨーロッパのバンドではイタリアのPFMと双璧でした。フォーカスやPFMの先にはカンやアモン・デュールII(ドイツ)がおり、またフォーカスやPFMにやや遅れてアフロディテス・チャイルド(ギリシャ)、タンジェリン・ドリームとクラフトワーク(ドイツ)が大成功をおさめ、ゴングとマグマ(フランス)がカルト・バンドとして小規模な成功をおさめましたが、後発組(本国デビューはフォーカスやPFMより早かったバンドでした)はどちらかと言えば無国籍性によって受け入れられた(カンも同様。アフロディテス・チャイルドは違うかもしれません)のに対し、フォーカスやPFMは英米ロックとは異なるヨーロッパ的音楽性で人気を博したといえる存在でした。実際はドイツやフランスのグループも発想は英米ロックとはまったく違うものでしたが、当時の受け入れられ方では一種のヘヴィ・ロック、アシッド・ロック、テクノ・ロックなどの型にはめた聴かれ方だったため、これらのバンドの実験性は'80~'90年代まで見過ごされることになりました。フォーカスとPFMは音楽的にわかりやすいヨーロッパ的特徴を備えていたとも言えます。ともにクラシックを本格的に学んできたミュージシャンのバンドだったのも共通しています。また前述の他のヨーロッパ諸国のバンドがサイケデリック・ロックの痕跡が残っていたのに較べると、フォーカスとPFMはサイケデリック色を払底した明快なプログレッシヴ・ロックだったのも特色に上がります。
このライヴはフォーカスの国際的な人気絶頂期にイギリスのレインボー・シアターで収録されたもので、バンドはセカンド・アルバム『ムーヴィング・ウェイヴス』で国際デビューするや一躍人気バンドになり、同作からシングル・カットされたヨーデルやポルカまで駆使した奇々怪々な「悪魔の呪文」Hocus Pocusが日本を含む各国で大ヒット、2枚組のサード・アルバム『フォーカスIII』とシングル「シルヴィア」Silviaも大ヒット、イギリスの各種音楽誌ではバンド・オブ・ジ・イヤーやインターナショナル・バンド部門1位などに輝き、ヤン・アッカーマンはほとんどの音楽誌でエリック・クラプトンが長年トップを守っていたギタリスト部門1位に表彰されました。それについてアッカーマンは「私はオランダ王立音楽院出身だ。ブルース・ギタリストと比較しないでくれ」とコメントしています。オランダ王立音楽院出身なのはオルガンとフルートのタイス・フォン・リアもそうで、この双頭リーダー以外のベーシスト、ドラマーはデビュー・アルバムから変動が激しかったのですが、レインボー・シアターでのライヴはフォーカス史上のベスト・メンバーと言える顔ぶれでした。またオリジナルLPでは実際のライヴとはずいぶん曲順に編集があるのも映像のおかげで判明しました。映像の難点はカメラの少なさから来る映像編集の単調さと、映像全体の暗さですが、アルバム用ライヴ収録はともかく映像収録はプロモーション用程度にしか考慮されていなかったのでしょうから仕方ありません。絶頂期フォーカスのライヴ映像が残っているだけでも御の字でしょう。オリジナルLPの曲目を上げます。
フォーカス・アット・ザ・レインボー Focus At the Rainbow (Imperial, 1973) Full Album : https://youtu.be/4pWfuO-PezQ
Recorded live at Rainbow Theatre,London, England, May 5, 1973
Released by Polydor Records Imperial 5C 054-24939, October 1973
(Side 1)
A1. Focus III (Thijs van Leer) - 3:52
A2. Answers? Questions! Questions? Answers! (Jan Akkerman, Bert Ruiter) - 11:29
A3. Focus II (van Leer) - 4:36
(Side 2)
B1. Eruption (Excerpt) : Orfeus - Answer - Orfeus - Answer - Pupilla - Tommy - Pupilla (Tom Barlage, van Leer) - 8:28
B2. Hocus Pocus (Akkerman, van Leer) - 8:30
B3. Sylvia (van Leer) - 2:47
B4. Hocus Pocus (Reprise) (Akkerman, van Leer) - 2:46
*
(Original Imperial "" LP Liner Cover, Gatefold Inner Cover & Side 1 Label)
『ムーヴィング・ウェイヴス』と『フォーカスIII』の完成度が高いので、この2作からの選曲である『フォーカス・アット・ザ・レインボー』は名盤2作から選りすぐりの曲(映像を観るとデビュー作から1曲「ハウス・オブ・ザ・キング」House of the Kingも演っていますが)をベスト・メンバーで迫力あるライヴで聴ける名盤、という高い評価もあれば、スタジオ盤の緻密さに較べると聴くに耐えないという酷評までさまざまですが、各国のチャート最高順位はオランダ9位、ノルウェー22位、イギリス23位、日本87位、アメリカ132位と好セールスを記録しています。次作『ハンバーガー・コンチェルト』でドラムスがピエール・ヴァン・ダー・リンデンからコリン・アレンに交代、その次の『マザー・フォーカス』ではデイヴィッド・ケンパーに交代とドラマーが安定しないのが結束力の低下に顕れてしまい、未発表曲集『シップ・オブ・メモリーズ』を発表して解散します。フォーカスの行き詰まりはタイス・フォン・リアが英語ヴォーカルを歌えないのでヴォーカリーズに頼ってきたこともあり、すぐにイギリス人のヴェテラン・ヴォーカリストのP・J・プロビーを迎えて『フォーカス・コン・プロビー』を制作して再結成するものの、アッカーマンはソロ活動に移っており(代役ギタリストのフィリップ・カテリーヌは優れたジャズ・ギタリストで、80年代にはチェット・ベイカーのレギュラー・ギタリストになります)、ヴォーカル路線も不評だったので、以降フォーカスはタイス・フォン・リアとヤン・アッカーマンが組んだり別れたりしながら今日まで活動を続けています。あまり役立つとは思えませんが、フォーカスのディスコグラフィーで締めることにします。10作目の『フォーカス8』は何と何を抜かして(おそらくベスト盤の類と思われますが)『8』になるのか、よくわかりません。7作目の未発表曲集にして一時解散アルバム『シップ・オブ・メモリーズ』までの7作は'70年代ヨーロッパのプログレッシヴ・ロックを代表する作品として今なお人気の高いアルバムです。
[ Focus Album Discography ]
1. Focus Plays Focus / In And Out Of Focus (1970)
2. Focus II / Moving Waves (1971)
3. Focus 3 (1972)
4. At the Rainbow (1973)
5. Hamburger Concerto (1974)
6. Mother Focus (1975)
7. Ship of the Memories (1976)
8. Focus con Proby (1978)
9. Focus: Jan Akkerman & Thijs van Leer (1985)
10. Focus 8 (2002)
11. Live at the BBC (2004)
12. Focus 9 / New Skin (2006)
13. Focus X (2012)
14. Live In Europe (2012)
15. Golden Oldies (2014)
16. Live In England (2016)
17. Live Anthology (2017)
18. Focus 11 (2019年)
(旧稿を改題・手直ししました)