人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

里霧へのメール(予備不安1)

午後の地震には驚いたね。ぼくはきみへのメールをそろそろ仕上げる所だったが、どさどさ崩れてくる本やCDから逃げてバスルームに避難し、揺れが収まって部屋を片付け携帯電話を見ると書きかけメールの冒頭数行しか残っていなかった(ああ!)。それでとりあえず地震見舞いを送り、記憶でメール「寝タバコ布団の夜」を書き上げた、ってわけさ。

Kさんは(Uさんも)返信くれないよ(泣)。なんか妹にも弟にも嫌われちゃったお兄ちゃんの気分。N先生はメールくれるけどね。画廊は行きづらい、音楽仲間も死んじゃった、教会だけが歓迎してくれる。
でも当分はドクター・ストップさ。

布団のプレゼントは嬉しいけど、やめとこう。きみにプレゼントされた布団では、他の女は抱けない(なんかすごいこと書いてるな、おれ)。

M浦さんは過去を切り離して新しく生きなおしたいという希望を持っている。そのための男は別にぼくじゃなくてもいいんだけどね。
ぼくと「出会ったのが入院」なのはたまたまだったと思っています、ときみはメールで書いてきた。M浦さんはまったく逆で、入院で出会ったからこそすぐに打ち解けあうことができた。まあ患者の中で彼女の問題が判るのはぼくだけだったのもある。彼女はそれを見抜いた。

この人はいいな、と思ったのは、「大変な所に来ちゃったけど入院してホッとしてる。あのままだったら私、危なかった」
アルコール依存性による統合失調様の幻覚、譫妄が出ていて、入院したら夜間だけになったという。
「それは現実の方が強烈だからだよ」
「あっ、そういうこと」
「深夜の幻覚は難しいが、自分でパターンを予想しておいて始まったら潰すんだ。ただの幻覚じゃないか、ってね。そうすれば短時間で治まる」
「そうか、リセットすればいいのね。今夜からやってみる。佐伯さんは…」
「うん。ぼくはそうやってきた。時間をかけて…。リセットか。いいね」
「そうよ。リセットできるようになるわ」
…いい女は最悪の状況でもいい言語感覚を持っている、そして前向きだ。
彼女はぼくの恋人よりもきみの友人がふさわしい。