VUが反商業主義、実験的前衛ロックの源泉として神格化され、ミュージシャンズ・ミュージシャンの座を不動としたのは、実際はかなり偶然の成り行きによる。曲の題材については始めから都会の退廃や内面の暗黒、狂気を歌う(麻薬、SM、同性愛、死など)ことでロックの歌詞のタブーに挑戦した。リーダー、ルー・リードの文学青年的資質が大きい。ビート・ジェネレーションの詩人・作家たちの反権力・反体制的な作風を大胆に歌詞に導入した。
皮肉なのは実際は彼らは作品に見あった評価と売上げを期待しており、なのにデビュー作(1967年)はアルバム・チャートにかろうじて171位という結果になったのは「アンディ・ウォホールの秘蔵バンド」としてレコード会社がまったくプロモーションしなかったからである。どこの雑誌にも広告もレコード評もインタビューも載らなかった。おまけに超資本主義セレブのポップ・アーティスト、アンディ・ウォホールのプロデュース(立ち会っただけ)とあって、なんだかよくわからないバンドと思われたのだ。ちなみにレーベルはヴァーヴ、ジャズの名門。前年からロック部門に乗りだし、エリック・バードン&アニマルズ、フランク・ザッパ&マザース・オブ・インヴェンションをボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクルのプロデュース実績のあるボブ・ウィルソンによってヒットさせた。もちろん十分なプロモーション体制をとってだ。
それにもともとアニマルズは大物バンド、ザッパはヴァーヴでのデビュー前からロサンゼルスでカリスマ的な人気と評価があった。対してVUはと言えば、アンディ・ウォホール主催のパーティ・バンドとしてひたすらアンダーグラウンドな音楽活動にいそしんでいた。VUの契約がヴァーヴに取られたので別会社からピンク・フロイドがデビューしたというすごい話もある。フロイドはデビュー作でたちまち人気バンドになった。ひきかえVUは…(以下続)