人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ローマの休日・おくりびと・ほか

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故・淀川長治氏は何度か皇室のお茶会に招かれたそうで、当時皇太子夫妻、現天皇夫妻が映画好きなので映画談義をしたくてご指名にあずかったという微笑ましい話があります。皇太子夫妻のフェイヴァリットは「ローマの休日」だとのことでした(現在の皇太子夫妻がキース・ジャレットのファンなのを連想させられます)。しかしなんというか、本物の皇太子(現天皇)夫妻に「ローマの休日」が大好き、と言われるとヤバいものを感じます。
おくりびと」はまあ、ぼくはモックンは好きだし広末涼子もあの映画では自然なので(これも夫婦ものですね)楽しく観ました。これは故・伊丹十三の開拓した「珍しい職業・しんどい行事」の路線に入るんでしょうね。職業・行事ものってメジャーな日本映画の大半を占めているんじゃないかな。伊丹十三のお父さんは山中貞雄とならぶ戦時下の天才映画監督・伊丹萬作なわけで、日本映画に系統を見るのなら没後急速に存在を忘れられようとされている伊丹十三は重要でしょう。
亡くなり方が正気を疑わせるような唐突で陰惨なものだったので、あれだけ生前もてはやされながら没後は旧作のテレビ放映までされなくなってしまったのは痛々しいことです。女性関係についてジャーナリストからのゆすりにあい、「死をもって潔白を証明する」と投身自殺してしまったのですが、第三者を立てて対応するような冷静さも失ってしまった。鬱と被害妄想が想像される。亡くなったので、あれだけ遺されたヒット作の数々まで忘れさられようとしている。つれないものです。
大江健三郎が青年時代からの伊丹十三の親友で、妹さんを奥さんに迎えました(昔の文学青年の恋愛範囲なんてそんなもん)。大江は伊丹萬作の著作集の編集もしています。企画ものばかりの伊丹映画のなかで唯一大江健三郎の家庭生活を描いた小説の映画化があります。伊丹十三の没後、大江健三郎ノーベル賞受賞後の小説家引退宣言を撤回して、自分と伊丹の関係を描いた「取り替え子」を発表し、小説執筆も再開しました。伊丹十三のどこをもってChangeringとするのか、学生時代までは大江健三郎の熱心な読者だったぼくにはかえって興味をそそられず、未読のままです。
伊丹夫人はぼくも応援してあげたい気持です。映画の成功とは別にさぞ心労が多かったでしょう。あの人はいちばん笑顔が似合う人ですから。