人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ダダイスト辻潤(4)

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以前に墨彩画家・エッセイストの佐伯和子(1935-・広島生れ)の作品はご紹介したことがあった。今回話の取っ掛かりにご紹介する現代思想史研究家・江口幹(1931-・岩手生れ)はそのご主人で、佐伯和子はぼくの父方の伯母だから義理の伯父、ということになる。パリ留学で知りあったと聞いた。伯母・伯父ともに戦後混乱期の家出少年・少女だから完全な自費留学だ。
江口は故・小田実らと親しい在野の思想家で、特にアナーキズムポール・ヴァレリーを主要な研究対象とする。もっともよく読まれたロング・セラーはダニエル・ゲラン「現代アナキズムの論理」(翻訳・三一選書1969)。他の主著に長篇小説「方位を求めて」(筑摩書房1973)、ルポルタージュ「黒いパリ」(同1974)。現在はフランスの戦後思想家コルネリュウス・カストリアディス(1922-1993)の主著の翻訳を分冊刊行している(法政大学出版局)。-以上、ウィキペディア風にまとめてみた。遺憾なことにウィキには伯父は載っていないのだ。
さて、ここまでで「おや?」と引っ掛かる箇所が最低一ヶ所はあるだろう。
(1)まず深読みすると、68年の文化大革命パリ五月革命の流れの中で、既製の共産主義・資本主義はともにアナーキズムによって解体される、という文脈が「現代アナキズムの論理」刊行の背後にあるのだろうか?それがアナーキズム新左翼がしばしば混同される背景になっていないか?
(2)カストリアディスは社会主義研究から社会主義の解体を予見した人、ある意味反動的転向者と言ってよい(ギリシャ出身なのも輪をかけていると思う)。その思想は特権的な大国・高度資本主義国家に対して順応的で、国家対国家の搾取の構造まで届かないのではないか?それはアナーキズムの可能性のまったくない世界観ではないか?
(3)以上ふたつはちょっとむずかしかったと思うの(といきなりおネエ言葉)。でも誰でもすぐわかる「?」なのはコレよね。「なんでアナーキズムヴァレリーなの?」
ポール・ヴァレリー(仏1871-1945)ならわかる。伯父の世代は批評家・小林秀雄の影響が大きく、ヴァレリーは小林の研究対象だった。詩人・思想家として詩集「魅惑」1922、評論「ムッシュー・テスト」1906がある。
ではヴァレリーアナーキズムとの関連はなにか?