人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

フレンチ・ロック(8) ・ワパスー

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フレンチ・ロック(8)最終回は最終回にもっとも似合わないバンド、ワパスー(Wapassou,1974-1986)。しかも大物と同格で1回まるまるだ。全10バンドを取り上げたわけだが、バンドも推薦アルバムの選出も筆者の偏向は避けた。エルドンとワパスーの優遇にも一応の理由がある。

凖A級バンドでもエルドンをトップに、ワパスーをシメに持ってきたのは、この2組はフレンチ・ロックでも他のバンドとまるで違うサウンドを作り上げたからだ。この2組も似ていない。ほぼ全編インストでたまにスキャットが入るのが共通するくらいだ。エルドンは垂れ流しだが、ワパスーの音楽はクラシックの室内楽に近い。

他に共通点。エルドンも不人気バンドだが、ワパスーは上を行く。筆者が中古盤店で買ったクリプト盤LP(画像1~3)は本国初回プレスの見切り品で、どれも千円そこそこだった。プレス枚数など千枚ほどだろうに本国でも日本でもまるで売れなかったのだ。

作品を紹介しよう。
○ミサ・ニ短調(1976・画像1)
サランボー(1977・画像2)
○ルートヴィッヒ?世(1978・画像3)

以上クリプト・レーベルからの3作が代表作で、それ以前に自主制作で、
○ワパスー(1974・画像4)
がある。内容は習作の域を出ないが、クリプト三部作の後81年と86年に出たアルバムは普通のポップスになってしまった。それに較べればワパスーの音楽をやっている。ジャケもいい。

ワパスーのメンバーは不動の5人だが演奏メンバーはヴァイオリン、ギター(女性)、キーボードの3人で、さらにライトショウ(女性)サウンド・エンジニアの2人も正式メンバーで、裏ジャケットに演奏メンバーと同格で写真も載っている。ということはライヴ活動にも重点を置いていたということだ。おそらくエルドン同様まったくの非・商業的グループとして自腹を切った音楽活動をしていたのだろう。

だって編成がヴァイオリン、ギター、キーボードですよ。クリプト三部作はどれも40分1曲。内容は耽美一色。独創性は抜群です。
特にこの1枚、ならば『ルートヴィッヒ?世』で決まりだろう。実在したバイエルンの狂王、ワーグナーパトロンだった芸術マニア、謎の死。構成も巧妙で、なによりシンセによる冒頭のメイン・テーマがこの世のものとは思えない。脳が溶けます。