人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(2)バンコ・政治性と音楽性の同居

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イタリアン・ロック第二回はバンコ(Banco,1972-)、正式にはバンコ・デル・ムットゥ・ソッソルコで「共済組合銀行」を指すらしいが、PFMの世界デビューを成功させたマンティコア・レーベルからの世界デビュー作「イタリアの輝き~バンコ登場」1975(画像4) 以降はバンコの略称でよしとなった。
この世界デビューは失敗したが、プレミアータ以上にイタリアならではの旨味がたっぷりあるのがバンコではあるまいか。プレミアータがあっさり味ならバンコはぐつぐつ煮えている。次回で紹介するアレアとプレミアータの橋渡しになるような(この3バンドはメンバーの交換も多いが)過激さと抒情の入り交じった音楽性。ノチェンツィ兄弟の2キーボードに巨漢ヴォーカリスト、フランチェスコ・ジャコモが加われば後は技量のあるリズム・セクションがいればいい。

第一作(1972年・画像1)で個性は確立されていた。多彩なキーボードに疾走するリズム・セクション、過激な政治的歌詞を美しいテノールで歌う巨漢ヴォーカリスト
第二作「ダーウィン」1973(画像2)ではさらに音楽性は多岐に渡り、怒りをひそめた「卑劣漢の踊り」から悲痛なピアノ・バラード「750,000年前の愛」まで迷宮のような世界になる。
次作も「自由への扉」1973(画像3)とのタイトル通り自由と連帯を訴えた曲が多いがサウンドは整理されてきている。親しみ安い曲が並び、『私を裏切るな』は国民的大合唱ナンバーとなった。バンコはイタリア共産党主催の常連バンドだった。説明がややこしくなるが、イタリアでは革新と民主主義のリーダーシップは共産党が担っている。

75年に前記3枚から選出した英語版「イタリアの輝き」(画像4)発表、優れた内容だったが商業的には失敗。翌年は映画サントラ1作と英語版・伊語版同時発売となった傑作「最後の晩餐」1976(画像3)を世に問う。参りました!1曲目のイントロから一触即発の空気が張りつめている。ジャコモの歌にも一切甘さがない。最高傑作だろう。だがこれを選ぶと後がないのだ。
オーケストラとの企画盤、ディスコ・アルバム(!)等を経て、70年代バンコ最後の輝きになったのは「春の歌」1979だった。ジャコモの歌がたっぷり聴ける。80年代のバンコはポップス・バンドだったが、90年代以降はPFM同様に初期の音楽性に戻って活動している。