人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

SかMか

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今回の画像はキング・クリムゾンクリムゾン・キングの宮殿」1969(上)とジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス「アー・ユー・エクスペリエンスド?」1967(下)で、上には'21st Century Schizoid Man'(統合失調症)、下には'Manic Depression'(躁鬱病)というタイトルの名曲収録。今回の「SかMか」とはこれを指している。
前者はテレビCMにも使われているが後者も面白い曲で、スクリーミング・ジェイ・ホーキンズの古典'I Put A Spell On You'くらいしかない3/4拍子のロックなのだ。6/8拍子ならいわゆる2拍3連、つまり4拍子のヴァリエーションでクリムゾンもその手だ。
あ、ジミより早い3/4ロックがあった。ザ・スパイダースの『フリ・フリ』1965がそうだった。

楽しい音楽の話から、さて本題。うかつなことは書けない精神医学の話になる。「記憶の欠落」の続き。
慢性化した統合失調症の入院患者の状態は、見るところ現実との接触を失って幻覚と妄想のなかにいるように思えた、というのが前回のまとめだった。では支離滅裂状態で会話不可能な慢性化入院者はどうだったか。これは素人には外面しかわからない。

一日中叫んでいる男はその前年入院したぼくを覚えておらず(毎朝「はじめまして。ぼくは…」と挨拶してくる男だった)、前年よりも幻聴が悪化して30分ごとに叫ぶ台詞が変わった。
別の患者にはすれ違いざまいきなり殴られたこともある。「殴れ」と命令する声が聞こえるので翌日には忘れているから大丈夫、と看護士に説明されたが、確かにまともに会話すらできない患者は幻覚や妄想の記憶すら一日ごとに流れ去っていくようだった。
この「命令する声」というのが統合失調症の症例としてよく本に出てくる。トランペッターのトム・ハレルは統合失調症を克服して一家をなした人だが、「飛べ」と命令する声が聞こえ窓ガラスに突進、血まみれになったが外には飛び出ず転落死はまぬがれた。30年以上服薬治療を受けながら演奏活動を行っており、現代ジャズ界の重鎮の位置にいる(岡田尊司統合失調症」)。命令する声という共通性が幻聴に現れるとは、いったいなぜなのか。なぜ、という疑問の方が無意味なのか。改めて考えてみたい。