人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ギリシャの70年代ロック

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 前回までフランス(8回)、ドイツ(14回)、イタリア(24回)、日本(1回)の70年代ロック紹介に加えて、1回ずつフランス語圈カナダ、オランダ、スウェーデン、スペイン、アルゼンチンの70年代ロックからベスト3と言えるものをご紹介した。 ベスト3ならギリシャチェコポーランドでもいける。東欧では取り締まりが酷しくなるまでは東欧GSが春を謳歌していたが、いわゆる「プラハの春」と呼ばれる自由化運動に対して、68年8月のソヴィエトのチェコへの軍事参入が東欧全体の自由化に重圧を加えることとなった。66年の文化大革命(中国)への注目とともに社会主義運動は民主国でも急激な高まりをみせており、68年5月パリでの「五月革命」は文化大革命を模倣しアナーキズムに接近したものとなる。

 音楽記事なので中学世界史はこのくらいにしたいが、ギリシャは戦後46年王政復古、67年軍事独裁(文化大革命も実態は軍事独裁だった)、74年共和制に復帰。掲載アルバムは、
アフロディテス・チャイルド「666」1971(画像1)
ソクラテス「ドランク・ザ・コニウム」1972(画像2)
○P.L.J.バンド「アルマゲドン」1981(画像3)

 80年代のアルバムは反則だが、作風は「666」を汲んだものだ。アフロディテス・チャイルドが新約聖書の黙示録なら、こちらは旧約聖書の朗読に暗い演奏が淡々と絡む。ジャケットも被爆した人間で重い。そのうち盛り上がるかな、と期待していると終ってしまうのだ。

 アフロディテス・チャイルドはデミス・ルソス(のち国民的歌手)とヴァンゲリス・パパサナシュー(のち国際的音楽家)のバンド。68年の軍事政権から逃れてロンドンへ向かう途中ヴィザの問題でパリに足止めされ、フランスで国際的ヒットを連発。ようやく足止めも解け、バンド解散記念にヴァンゲリスが好き放題作ったのがLP2枚組大作「666」で誇大妄想的ハッタリではスペインのカナリオス「シクロス(四季)」しか比較し得るアルバムはない実験の嵐。これが世界的に大ヒットしたのだから70年代とは物好きな時代だった。

 ソクラテスはこの第一作ではトリオ編成のどんくさいハードロック(そこがいい)だったが、76年の「フォス」はヴァンゲリスのプロデュースでモダンな音になったかわりに独自性は薄れた。難しいものだ。